しーのごーのって子供が言うから5話

君が笑ってくれたから

君の声を聞けたから

君の笑った顔が見れなかったから

色々理由はあるのだけれど

とりあえず、君のことをもっと知りたい。

君と話がしたいのに、次の言葉が出てこない。

他の人となら、いつも簡単にお喋りしているのに。

私はどうやって、人と話すんだっけかな。

少し慌てる私を見て、君は少しため息をついたのを、私、実は気づいてたのよ。

「似合わないね」

君は私の本を指す。

「まあね。でもちょっと面白いよ」

ふうん。それだけ言って君はまた

何も無い世界に戻ろうとした。

君を引き止めたくて、君と同じ世界を見てみたくて。

「よかったら、読んでみて」

本を君の机に置いて

君が何かを口にする前に私は教室を出た。


君の不思議な雰囲気を少しでも掴みたくて

背伸びして買った少し難しい小説。

難しいと思ってはいたけれど

それはただの先入観で

読んでみると意外とわかりやすくて面白い。

きっと、君もそんな感じで。

手に取りにくそうな見た目のハードカバーの小説で

誰も手にしないから少し埃をかぶっていて

だけど読んでみたら意外と普通の人間で。

きっと、多分

そんな感じだと思うんだ。

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