第14話 スケベェなお仕置き

≪ジェリゾ鉱山≫までの道程は、馬車で四日程掛かる距離だった。俺達は朝イチで≪ミーティン≫を発った訳だが、それだとフィールドに到着するのは四日目の夜になるらしい。

 流石に初心者のラトリアを連れて夜間行軍をする気にはなれないので、鉱山近くにある村で一晩明かしてから向かう事にした。

 本人は「夜でも大丈夫……ムサシ達に会う前に、夜通し歩いた事もあった」と言っていたが、それはそれ、これはこれである。

 村には鉱山から締め出しを食らっている鉱夫達も身を寄せているとの事なので、村に寄るついでに現場の状況も聞いておこう。

 そんな感じで予定を立てた俺達の姿は、まだ街道を行く馬車の中にあった。リーリエとコトハは防具のプレート類等を外してラフな状態になり、ゆっくりと寛いでいる。ラトリアは元々の防具のデザイン的に、そのままでも十分な様だが。

 俺はと言えば、上半身の鎧を脱いでタンクトップ姿になっていた。下は防具つけっぱ……流石にパンツ姿にはなれないよね。


「リーリエ、あとどの位?」

「このペースなら、三時間程ですね」

「だとすると、村に着くのは七時過ぎ位か……上手く話が聞けりゃ良いけど」

「大丈夫やない? 多分鉱夫の人達だって早くカルブクルスを追い払って欲しいやろうから、うち等への協力は惜しまんと思うよ?」

「ああいや、その辺は心配してねぇんだけど……俺の見てくれで逃げられたりしねぇかな、と」

「「…………」」

「ねぇ何で黙るの? 否定して?」

「……だいじょうぶ」


 俺のミスリルハートに罅が入ろうとしていた時、俺の膝の上に座り背を預けていたラトリアが顔を上げ、俺の頬に両手を添えた。

 何でそんなとこに座ってんだと言う話はさて置き、ここは一発ラトリアによる会心のフォローを期待して――。


「逃げる前に、気絶する……だから、逃げられない」

「ホァーッッ!?」


 フォローどころか止め刺しにきおったよこのチビッ子! 強い!

 がっくりと肩を落とした時、俺はふとある事が気になった。背を預けたまま俺を見上げたままのラトリアに、その疑問をぶつけてみる。


「ラトリア、俺は確かにばっかし怖い見た目をしているかもしれない。だが、何ゆえに“気絶”すると断言出来る? 正直、人を見て気絶するって相当だぞ?」


 俺がそう聞くと、ラトリアは顔を下げて対面に座っていたリーリエ達を指さした。


「リーリエが……昔、そんな事があったって、昨日の野営の時言ってた。ムサシが、まだ≪ミーティン≫に来たばっかりの頃……何度か、そう言う事があったって」


 ほう、成程……成程なぁ。野営の時って事は、俺が見張り番をしている間か。

 俺がゆっくりと視線を動かすと、リーリエがサッと首を横に振って目を逸らした。それを見たコトハは、プルプルと震えながら笑いを噛み殺している。

 

 ――、と脳内でスイッチが入った。


「リーリエぇ、ちょっとこっち来ぉい」

「ち、違うんです! 別に、ムサシさんの事を馬鹿にしたとかじゃ――きゃっ!」

「ぐぇ」


 ぶんぶんと首を振り、手をパタパタとさせるリーリエを、俺はぬっと体を前に押し出して捕獲する。急に動いた事によってラトリアから潰れたカエルの様な小さな悲鳴が上がったが、それに関する謝罪は後だ。


「馬鹿にしたなんて思っちゃいないぞぉ? でも、俺の黒歴史をわざわざラトリアに教える必要はあったのかぁ?」

「そ、それはその……口が滑ったと言いますかですね――ふゃっ!」


 目を泳がせながら言い訳をしていたリーリエの口から、突然悲鳴が上がる。それも、やたら艶めかしいヤツが。

 何でそうなったかと言えば、リーリエの細い腰を抱き寄せた俺の右手が、その形のいい小振りな尻を鷲掴みにしていたからだ。


「ちょ、ちょっとムサシさん!?」

「お仕置きだ、暫く揉みしだいてやる」

「そ、そんな! コトハさんやラトリアちゃんだっているのに……それに、御者の人に声が聞こえたら――」

「頑張って我慢しろ」


 短くそう告げ、俺は本能の赴くままにリーリエの尻を揉みまくった。

 一揉みする度に、リーリエの体がびくりと震える。必死に口を覆って声を押し殺している様は、見ていると中々物があるね。


「む、ムサシはん。流石に、もう少しましな方法を……」

「なーに他人事みたいな事言ってんだぁコトハ? 笑ったお前も同罪じゃ」

「えっ――あっ!」


 呆ける間も与えず、俺は素早くコトハのへと左腕を伸ばした。

 以前俺がコトハに贈った首輪チョーカーは、大型犬の首に付けられる位のオーバーサイズである。なので、当然首との間には隙間があり――俺はその隙間に左手の人差し指を引っ掛け、コトハをこちらへと優しく引き寄せた……後が怖いなコレ。


「俺が一人で夜の番してる時だったら、コトハもリーリエとラトリアと一緒に馬車の中に居たよなぁ……なーんで止めなかったぁ?」

「あっ、あっ」


 ぬぇっとりと問い詰めながら俺が首輪に掛けた指をクイクイと動かしてやると、コトハの口からスケベェな声が断続的に漏れる。

 ……今更だけど、単なるお仕置にしてはやり過ぎじゃね? てか、ラトリアの前でやるにしてはあまりにも情操教育に悪い様な……ど、どうしよう。

 ノリと勢いでやっちまった訳だが、若干の平常心が俺に戻る。マズい――我に返って二人から手を引っ込め様としたのだが、どう言う訳か二人が全く抵抗をしない。

 流石の俺でも、リーリエ達が本気で嫌がるなら即座に開放して平謝りするつもりだった。しかし、今の二人はさしたる抵抗の様子も無く……それどころか、徐々にとろんとした顔つきになっていく始末。

 あ、これアカン。しかし時すでに遅し――俺のどうしようもないスケベ心から来る嗜虐心が刺激された瞬間、が入ってしまった。

 ブレーキを失った俺はコトハの首輪から指を離し、フリーになった腕をその服の上からでも分かる引き締まった腰へと回して、リーリエと同じ様にその体を抱き寄せる。

 そうして、無造作に手を動かし――そのリーリエに負けず劣らずの破壊力を持つ対艦ミサイルちょーきょぬーを、手中に収めた。

 ちなラトリアへの配慮に関しては……まぁ成人してるし平気やろ、うん。少女漫画読んでるんだったら、きっとこんな光景にも耐性があるって。めちゃんこ偏見だけどな!


「……っ!」

「お?」


 俺が手を動かし始めるよりも一瞬早く、コトハは俺の首筋へと顔を埋める。この感触……噛んでる? まぁ今の俺はその程度ではビビらなくなっているので、構わずその胸をまさぐってやった。

 すると、俺の首に食らい付いたままのコトハの口から、荒い息が漏れる音が微かに聞こえた。あぁ、成程ね。声を抑える為に噛んだのか……いや、リーリエと同じ様に手を使えばよくね? 別にいいけど。


「おぉ……おぉー……!」


 そんなどの角度から見てもイカガワシイ俺達を見たラトリアは、驚嘆の声を上げる。いつの間にか俺に背を預けるのではなく、向き合う様な形で俺の膝に座り直していた。

 そうしてまじまじとリーリエとコトハの顔を見比べているのだが……いや、ちょっと待て。この体勢は流石にヤバい、児ポ法違反で捕まっても俺何も文句言えねぇ! それ以前に公然わいせつ罪やら何やらでしょっぴかれそうだけど!!

 この世界にあるかどうか分からない罪状が頭に浮かんだ時、リーリエとコトハを見詰めていたラトリアの視線が、不意に俺へと向いた。


「……ムサシは、悪いオトコ?」


 それは、純粋な疑問だったのだろう。キラキラとした瞳で見詰めてくるラトリアに、俺はフッと笑って答えた。


「そうだぞ、俺は極悪な大男だ。だからラトリアは将来恋人を作る時、俺みたいな奴に捕まらない様にするんだぞ?」

「ん……努力は、する」

「あ、確約はしてくれないんすね」

「未来は……誰にも、わからない」


 いや、確かにそれはそうなんだが……若干、心配である。しかし、こればっかりはどうにもならん。流石の俺でも視えもしねぇ未来への干渉なんて不可能だからな。

 そんな事を考えながらも、俺は手を休めない。暫くリーリエとコトハにお仕置きを敢行していると、俺はある違和感に気付いた。

 ……何か、おかしい。こんな事を意図的にやるのは初めての筈なのに、やけに手が――に、動く。

 迷い無く的確に二人の体を攻め立てる俺に、リーリエとコトハはかなり必死に声を押し殺していた。こんな女体を知り尽くした様な動き、男の本能だけでやるのは土台無理な話だ。何かしら経験を積んでいなけりゃ出来ない動きと言っていい。

 しかし、記憶にある限り俺にそんな戦歴は皆無だ。色町にはリーリエ達の言いつけで行かせて貰えないし、童貞のままだし……天性の神の手ゴッドハンドの持ち主って訳でも無い。我が肉体よ、これは一体どういう事だ?



 ――細けぇ事はいいんだよ。Don't Think. Feel!――



 おk、把握。取りあえず続けるね?


「んっ、んぅっ!」

「フーッ、フーッ……!」

「これは……えろい」


 全く止まらぬ俺の猛攻に、頬の紅潮と蕩けた表情を隠す事が不可能となっていくリーリエとコトハ。それを見てどんどんテンションが上がってきているラトリアを尻目に、俺は筋肉のお告げに従い存分にした。










「あ、ラトリア。この事はアリアには秘密な? 俺十中八九怒られるから」

「ラトリアが黙ってても……リーリエとコトハが、言うと思う」

「オイオイオイ、詰んだわ俺」

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