隕石の落ちた森

 炎の匂いがする。僕がこれから目の前の世界を進む上で頼りとなる炎だ。バチバチと燃え続ける炎の横で目を閉じると、瞼の裏で雷が鳴った。僕はこれまでに刻まれた歴史のことを思った。僕は周りよりも大人びていて――静かに創り上げて来た世界が、ある時期に少しずつ、しかし徹底的に壊された。雷は炎を生み出す様に思う人もいるかもしれないけれど、それは違う。というより、その炎に意味はない。僕の意識が及ばないところで燃え広がる炎は、ただ進む道を隠すだけだ。つまり、意識することによって僕は頼りとなる炎を大きくすることが出来る。

 僕が想像する僕の中の世界は、そのときの気分に応じて様々な景色を見せる。しかしそれがどんなに美しい場所であっても、僕は常に雷の恐怖に怯えていなければならない。それは不意にやって来るし、僕には過ぎ去るのを待つことしか出来ないから。いつか、僕は頭の中に森を描くことがあると誰かに教えてあげたことがあった気がする。その森は昔とても綺麗な場所だった。だからどうしても誰かと共有したくて、少し勇気を出して言った。同意されるかどうか正直不安だったけれど、その人は分かってくれた様な気がするな。――あれは、誰だったか。僕は今でもたまにその森に現れるけれど、景色はすっかり変わってしまったよ。雷が生まれるのはいつもこの森からなんだ。

 雷が過ぎ去った静謐な世界で、僕はこんなことばかり考えている。雷のことは最大限に抽象化することで容易に歌詞に出来るけれど、正直に言って僕は森との付き合い方が分からない。寒々しい森にいる日は大切な炎と雷による炎の見分けがつかなくなるし、どうしても過去にばかり目を向けてしまう。それを歌にして弔う勇気も持っていないのに。

 僕の歴史を、僕の炎が刻む音がする。どこかで滝の音がする。

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