おっぱいお兄さんの事情

第5話 苦手意識との協同

「あ、出てきた、胡桃沢くん、こっちこっち・・って胡桃沢くんなんで帰ろうとしてるの?」


「ちょっと俺用事思い出したから。」


「さっき用事あるか聞いたらはっきりないって言ったよね?」


「今ちょうど思い出したんだよ。」


じー

吉丘が疑いの目で見つめてくる。


「う、俺ああいうタイプ苦手なんだよ・・」


「胡桃沢くんにも苦手なタイプってあるんだね。」


「そりゃあるさ人間なんだから。」


「だからって見捨てるんだ。へー。ひどいなぁ胡桃沢くん。」


「だ、だいたいああいうやつは俺みたいな、なにもかも完璧なやつに話しかけられるだけでも嫌だと思うぞ。」


俺には経験がある。

あれはそう中学のときの学祭準備で、、


【回想】

「胡桃沢く~~ん!クラス企画の使用人喫茶で執事の服着て接客してよ〜!」


「絶対似合うよ〜!」


「俺?いいけど。あ、・・君まだ役割決まってないよね?一緒にどうかな?執事役」


近くにまだクラス企画の役割が決まってない男子生徒に声をかけた。


「いや俺はいいよ」


「そんなこと言わず、もう一人執事がいた方が仕事の効率も良くなるし。」


「もういいよ〜胡桃沢くん、別にみんな胡桃沢くんの執事姿が見たいだけだし、一人で十分だよ!」


「ちっ。」


「なにあいつ舌打ちしたんですけど、感じ悪〜」


「いこ〜胡桃沢くん」


「いや、でも」


男子生徒は席を立ちどこかへ行ってしまった。俺はその男を追いかける。


「ねえ君、執事役が嫌ならこの役割はどうかな?これなら変な格好をしなくても仕事ができるよ。」


「俺に構うなよ」


構うわ。俺はクラス委員でもあるからみんなの役割を割り振らないといけないんだよと思いつつ


「・・・でも一人一つはクラス企画で役割を決めないといけないんだ。どうかな?」


「別に俺学祭休むからいいんだよ」


「え?」


「クラス企画なんて俺がいなくても充分まわせんだろ。それに俺友達いないし。だから文化祭なんて参加しても意味ないんだよ。まあ友達が多いお前にはわかんないと思うけど。」


「いやそれは、、」


そいつは結局学祭を休んだ・・・


【回想終わり】


そして俺はそいつの分まで働くことになった!!

なんなんだ!行きたくないから行かないだと?!誰かがお前の分まで働かなきゃいけなくなるんだぞ?友達がいないから参加したくないなんてただのわがままだ!


と言いたかったけど言えなかった。

たしかに俺は人望があり、友達も多かった。だから俺が言っても綺麗事を言ってる、何にもわかってない奴だと思われるだけだと決めつけて、正論のはずなのになにも言い返せなかった・・。共同で作業をしないといけない時に一人でいるやつの気持ちがわからないと、俺はあいつの本当の気持ちを理解しようともしていなかった。

どうするのが正解だったのか、未だに分からない。

あの時、強気で言いたいことを言えなかったこと、しっかり向き合えなかったということが、自分の中で大きく心残りになっている。その出来事がぼっちという人間を苦手になったきっかけだった。



「たしかにお兄ちゃんは人見知り気質なところはあるけど話しかけられて嫌だなんて思わないよ」


「どうだろな。俺がいきなり話しかけたら変に思うだろうし。」


「いいからやってみないとわからないよ!ほらほらほら」


「おい!押すな!」


どんどん押されて俺はおっぱいお兄さんに後ろから少しぶつかるかたちで出会ってしまった。


「うわ、」


「あ!先輩、すみませんぶつかってしまって、、」


「うわ、胡桃沢滉治郎。」


ほら見ろめちゃくちゃいやそうな顔して俺のことを見てくるぞ。


「ん?かなこ?」


「あ、お兄ちゃん偶然だねこんなとこで会うなんて!」


なーにが偶然だねだ。ぜんっぜん偶然じゃないわい。


「そうだなあんまり会わな、、、、、?!?!おい、胡桃沢がもってるその形状の袋まさか、、」


あ!!やばい!持ち歩いてた・・!!一回教室戻って鞄に入れてから来れば良かった!!


どんな形状かというと二つのお椀が入ったような、つまりおっぱいである。袋はいたって普通で中身は見えなくなっているのだがいかんせん形が良すぎて浮き出てしまう。これを見ただけでは素人は何が入ってるのかまるでわからないのだが、はぴおぱに尋常じゃない愛を注いでいる人にはその形がなんなのか分かってしまう。しかもこれは新作ゲームのパッケージ、Fカップをモチーフにしたデザインなのだ。

この形に気付くなんてさすがおっぱいお兄さんだ。

おっぱいの話をしたいのは山々だがまだ親交を深められていない。それに人通りもある。ましてや先ほど俺に対して嫌悪のまなざしを向けていた。まだ暴露するには危なすぎる。


「あ、えっと、これは」


「あ!これ、お兄ちゃんの好きなやつじゃないよ。形は似てるけど全く別物だよ!生徒会で使うやつなんだって~~」


「そ、そうなのか、ちょっとびっくりした・・・」


「あははやだなぁお兄ちゃん。あんなものが学校にあるわけないでしょ~〜」


助かった

吉丘、俺はおまえを見直したぞ。すかさずフォローしてくれるなんて。

だがあんなものとはなんだ!あんなものとは!


「じゃあ俺は帰るな。」


「あ!お兄」


「待て」


俺は吉丘がお兄さんを呼び止めるのを阻止した。


「え?」


おっぱいお兄さんは帰っていく。


「今はやめておこう。もう少し策を考えなければ、あのお兄さんと仲良くなるのは難しい。」


「そっか、、」


吉丘は少しだけシュンとしている。

でも今ここで仲良くなろうとしても空回りするだけのような気がした。


「心配するな。俺はお兄さんと友達になりたいと思っている。おっぱ・・・俺と同じものを好きだとしっかり確信できたからな。あれを好きな奴に悪い奴はいない。とにかく策を考えてから接近しようと思う。」


「うん。ありがとう。」


それにそろそろ苦手も克服したいところだしな。



教室に戻る


「かなこ〜今日部活あるの〜?」


「今日はないよ〜!」


「じゃあいっしょかえろ」


「うんかえろ」


「吉丘、もう少しお兄さんのことを知りたい。最寄の近くの公園で話さないか?」


「あぁ、おっけいあの公園ね」


普通に後で会うことを話し始める俺たちに吉丘の友達が驚く。


「え!なになに?公園で?かなこ胡桃沢くんとそんな仲良かったっけ?」


「ちょっとお兄ちゃんのことで相談に乗ってもらってたんだ。ほら胡桃沢くんに相談したらなんでも解決してくれそうじゃん。」


「へ〜〜〜」


何か疑っているような目をしてニヤついている。何か誤解されていそうだ。


「じゃあまた後でね〜胡桃沢くん」


「ああ」


「じゃあね〜!胡桃沢く〜ん」


ニヤついてやがる。


「こうじろうー帰ろうぜ〜」


「ああ帰るか」



最寄駅の近くの公園にて


「よし、じゃあまずお兄さんがなぜぼっちさんになってしまったのかを教えてくれ。」


「なんか友達との喧嘩?らしい。」


二人で公園のブランコに乗りながら話し合う。


「私、茶道部の先輩に用があってたまに三組に行くんだけど、二年の後半からいつ見てもお兄ちゃん休み時間突っ伏して寝たフリしてたり、ずっと一人で頬杖ついて窓の外見たりしてたからもしかしてと思って、その同じクラスの茶道部の先輩に聞いてみたら、友達と何かが原因で喧嘩したらしいって言ってたんだ。」


「友達との喧嘩が原因でぼっちさんか・・。三年でもその友達とは同じクラスなのか?」


「先輩の話によると三年に上がるときのクラス替えでその喧嘩した張本人とは違うクラスになったみたい。今ぼっちなのはクラス替えしたばかりだからなのか、何か理由があるからなのか。なんかよくわからないね。」


「んーただ単に一人でおっぱいにふけっていたいからとか、、」


「そういうことなのかな。家でもはぴおぱとかのことを話してくるときはすごく楽しそうだけど学校とかのこと聞くと、俺にはおっぱいだけで十分だ。おっぱいより優先するものなんてなにもないって言ってなんかひねくれてるんだよね・・っておっぱいにふけってたいから一人でいるってそれただのやばいひとだよ!そこまでお兄ちゃんやばくないよ!」


「学校よりおっぱい優先か、なるほど」


「全然なるほどじゃないよ!」


「よし思いついたぞ。」


「なにを?」


「おっぱいお兄さんと仲良くなって友達になる方法をだよ。」


「え!ほんと?」


吉丘は嬉しそうに胡桃沢を見る。


「ああ。早速だが今から吉丘の家に行ってもいいか?」


「はい?」

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