君はやっぱりすごい人だった

ぶろさむん

君はすごい人

プロローグ


「胡桃沢くん、今日って急ぎの用事とかある?」


帰りのHRが終わり、まばらに生徒たちが帰っていく中同じクラスの女子が声をかけてきた。


「いや、ないよ。」


「そっか、じゃあ今ちょっといいかな?渡したいものがあるんだ。ここだと・・・渡しづらいからさ。」


女子は淡々とした様子で言葉を続けた。


「・・・・・・・・・・・・分かった。」


俺は立ち上がりその女子の後をついていく。

吉丘かなこ、今俺に話しかけてきた女子の名前だ。吉丘とは全然話さないわけでもないがすごく面識があるわけでもない。そんな吉丘が俺に何か渡したいものがあると言ってきた。しかも教室では渡しづらいものらしい。一つだけ、たった一つだけ思い当たることがある。

もしあの時のあれが原因で、あれを渡したいということだったら、今日は、いや、今日からとんでもないことになる・・

考えてても分からない、早く吉丘が何を渡そうとしているのかを知らなければ、らちがあかない。


「よし、ここら辺でいいかな。」


吉丘は生徒が通ることの少ない校舎の裏門玄関を渡し場所に決めたらしい。

人目に付かないところ。やはり・・・


「胡桃沢くん、昨日これ落として行ったよね。一応確認してもらえないかな?」


あの袋の形状は・・・

吉丘は袋に入ったそれを俺に差し出してきた。やっぱりお前が持っていたのか吉丘。

俺は確信してしまった。吉丘がなぜ、人目につかないこの場所を渡し場所に選んだのか、そして今からすることを。

俺は差し出されたそれを受け取らずに聞いた。


「何が目的なんだ?」


「え?」


とぼけた顔をしても無駄だ。もうすべて分かっているのだから。


「俺にこれを届けてそれで終わりだなんてありえない。何か目的があったからこれを届けようと思ったんだろう。そう俺を脅してな。」

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