闇に溶ける

花はまだ咲かぬ

　この季節が丁度良い。

　もう少し暖かくなれば、庭のこぶしの花も咲くだろう。

　我が家の庭には桜や梅それに桃はないけれど、季節を彩る花はそれなりある。

　その昔、火鉢として利用されていたものでメダカを飼っている。彼らもまた我が家の庭を賑わしてくれている。

　もう十年以上前になるだろうか、戸建ての小さなテラスを総ステンレスで作り直したことがある。外注すると高くつきそうなので、仕事が暇な時期に自分で作ったものだ。

　当時私はステンレスの溶接にはそれなりに自信があった。まあ、綺麗には出来ている。しかし、今見ると少々粗が目立つかな。

　そのテラス越しに庭を眺める。八畳乃至は十畳ほどの広さがあり、テーブルと椅子を置いても十分な空間を維持できている。

　蕾しかない葉も殆どない樹木を眺めつつ、ビールを飲む。外でこうして飲むのはピルスナーが最適か？

　ラガーとは違いすっきりとした後味、冷やし過ぎないのがまた堪らない。

　春を迎える準備を整えた庭の樹木たち。

　彼らに乾杯しよう。

　肴はラムのグリル。

　ラックで購入した肉に香辛料と塩を用い、丸一日漬け込んだものをグリルに放り込んだだけの簡単な料理だ。

　お気に入りの波刃のペティナイフで切り分けると、中は程よくピンク色をしている。

　何もつけなくとも十分うまい。味に慣れ飽きてきたら、柚子胡椒でもつけるとしよう。

　花の無い、花見。

　この庭に花が満ち溢れる頃、またお邪魔するよ。