能力者が生きる世界

りゅーと

第1話

俺は今青空が広がる原っぱに立っていた。

そこには大きな木が一本立っているだけで後はなにもなかったがどこか幻想的な場所だった。

しかしその木の下に俺より少し背の高い女の人がいるのに気づいた。

声をかけたかったがうまく声が出ない。

目を凝らしてみるとあちらも声をかけているようだったが、よく聞き取れなかった。

だが、足は動くので彼女の元に行こうと足を踏み出したところで現実に引き戻された。


「......ん、朝か?最近やたらとこの夢見るな。っとじゃなくて早く準備しなきゃな」


俺は新開学園2年の城ヶ崎 奏多(じょうがさき かなた)だ。

学校へ行く準備のため、服をクローゼットから取り出す途中だったのだが、中にいるものを見て思考が固まった。


「スーハー、スーハー。あっ!お兄ちゃん!おはよう!」


「ああ、おはよう......じゃなくてなにしてんだよ雫(しずく)!」


雫と呼ばれた女の子はゆっくりと立ち上がりスカートをパンパンとはたくと、ゆっくりと告げた。


「お兄ちゃんのにおいを嗅げるのは妹の特権だよ!」


「どこにそんな兄妹がいるんだよ!」


そう。

この少女は俺の妹なのだ。

桜色の腰まで届く綺麗な髪、顔立ちも整い、運動、勉強共に出来るまさに完璧な妹、と言いたいところだが今も俺のパンツを頭にかぶり、


「はっ!お兄ちゃんとドッキングしてる!」


などと言っている変態である。

これでも高校1年生なのだが、少々......いや、たいぶ頭のおかしい子だ......。


「おいおい、やっと謹慎が解けたんだから雫も早く準備しろよ」


「全くだよ!体育中のお兄ちゃんの写真を撮りながらお兄ちゃんの制服のにおいを嗅いでただけで謹慎だなんておかしいよ!」


「それがおかしいんだよ!!!」


実際、雫はおかしかった。

しかも自宅謹慎と言われ、


「お兄ちゃんのベッドのにおい嗅ぎ放題!」


と思いっきり叫んだのだ。(グラウンドまで聞こえるほどの声で)。

......ベッドの下見ないよね?お兄ちゃん困るよ?


「まぁいざとなったら瞬間移動(テレポート)で一気に行けるんだけどね〜」


「まぁそれもそうか」


雫の能力は瞬間移動。

任意の場所へ一瞬で移動することが可能な便利な能力。

ランクはBだ。


「で、お兄ちゃんの今の能力はなに?」


「ん?じゃあやってみるか」


そういって能力を発動した僕の目にうつっていたのは

―雫の下着だった。


「雫!後ろ向いてくれ!!!」


「ほう、その反応は感知能力(センサー)だね?」


感知能力は、透明になっているものを感知できたり、罠を察知したりもできる。

そして何故か服が透けて見えるなどといった能力だ。そのため俺には今、前に立っている雫がなにも着ていない、つまり生まれたままの状態に見えているのだ。もっと簡単に言うと、何もしなくてもToLOVEるな状態。

それに、次々とステータスが見えてくる。

身長、体重、スリーサイズなどなど。

俺はとっさに後ろを向く。


「分かってんなら後ろ向けよ!」


「むしろ見て!」


「見るかー!」


雫が、今の能力は何?

と言ったのも、この事態に対応できなかったのも俺が所持している変な能力のせいだ。

能力の名前はランダム。

つまり何が出るかわからないということだ。

使い勝手が悪い能力のため、ランクはGだが、ランダムという能力は世界で一つしか確認されていない。 その能力の保持者がこの俺というわけだ。

ランダムだから、家とか大丈夫なの?

燃えないの?

凍らないの?

と思うかもしれないが、その点は問題ない。

雫はBランク、俺は世界に一つしかない能力ということで国から色々と資金をもらっており、家を何が起こってもだいたいは対応できるように改装してある。 国はよほど能力者というものに期待しており、こういったことには莫大なお金をつぎ込んでいる。

ちなみに城ヶ崎家の改装費はサラリーマン何人分!?

ぐらいの金がかかっている。

こちらとしてはありがたいことだが、なにせそれをしてしまってるのは俺な訳で

―なんだか複雑な気持ちになる。


その後、雫を振り払いつつ何度も邪魔されながらなんとか準備を終わらせ、向かいの家に行き、幼馴染みである野薔薇 琴音(のいばら ことね)を迎えに行った。まぁこいつもキャラが濃いわけで......

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