ESPーー超能力特殊対策係
間口刃
第1話
辺りでは軽快で爽快な曲と同時に、人々の笑い声、雄叫び、罵声などが入り乱れている。
そんな中、隅の方で囲まれた僕はーーカツアゲされていた。
「ち、あーコイツ金こんだけしかないじゃん」
「ほんと使えねー奴だな。オラなんか言えよ、クズがよっ!」
「ほらほら、正義さん。俺たち金無くて困ってんだよ。助けてよー」
いつからこんな目にあったのか。今じゃもう分からない。
僕の名前が正義だからなのか。それとも、バカな正義感に当てられた結果ーー裏切られたのか。
「おいおい、お前達」
「は、なんだよ……。あ、なんですか?」
「悪いけど、このお方がそのぬいぐるみ欲しいんで、退いてくれねーか」
『助けてくれる』と、一瞬でも思ってしまった僕を道端に落ちているゴミ一瞥するように、止めもせず人形のよい金髪の女子高生と目つきの悪い気だるそうな男は自分達を通り過ぎて行った。
「なぁ、こんなカカシじゃなくてよ。女子呼ぼーぜ」
「ならよ、俺が呼んでやるから一人500円な」
「マジかよ、本当抜け目ないな」
遊び終わったのように放置された僕は帰路に着いていた。
もう考えたって、手遅れなんだ。
結果は何も変わらないんだから。
◆◆◆
夕方の帰り道を一人で歩いていく。
中身が空っぽの財布で重量は軽いはずなのに、足取りは重い。
目立った外傷はないけど、体中が痛く今にでも…………。
そんな透かし笑いしか出ない状態の僕に背後から誰かに押されて変な声をだして、盛大にすっ転ぶ。
「ごめん、大丈夫?」
「大丈夫じゃねーよ、痛ーじゃんか」
「お詫びに何か奢って」
「普通、逆だろ」
背後から声をかけてきた人物は野分 咲である。
絵に描いたような優等生とは言えないが、クラスの人気者である。
「どうしたの? 元気ないの? 田中や鈴木、それと清宮くんとかといつも仲良くしてるのにさ。あー、さては夜食にプリンを食べちゃったとか?」
その言葉を無視した。
もっとも、悪態を吐く気力もなかったからだ。
最近のいじめは巧妙で、基本的に先生が見てない所で行われる。
だからと言って、いじめを知りながら面倒だという理由で、見て見ぬフリを続ける奴だっているんだ。
もっとも、教師でさえやらないのに一般人がやるなんて事はないのだろう。
だからーーコイツが知らなくたって、何の不思議じゃない。
「あ、そうそう。さっき清宮くんにゲーセン誘われて行ったんだけどさ。余分に取っちゃったから、志士蔵にあげるよ」
そう渡されたキーホルダーを俺は受け取った。
その後、咲がなんて言ってたかあんまり覚えていないし、耳に入ることなかった。
彼女が去った後、俺はキーホルダーを捨てていた。
「これ取るだけ無駄だったな」
さっきよりかは上手く笑えたかもしれない。
今はそれだけでも、滑稽でしかなかった。
ESPーー超能力特殊対策係 間口刃 @maguti41
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