第6話
俺たちは長い道のりを歩いてサイコスに辿り着いた。
ファズがいつもこの道を通って俺の家に来ていることが分かり、なぜこんな長い道のりを歩いてまで俺の家に?と聞いたら、「あんたを馬鹿にするためよ!」と言われたので頭にチョップを入れた。
結構強めに。
「とまぁ着いたわけだが、ファズん家はどこだ?」
「私の憶測だとかなり大きい家のはずです!」
きょろきょろと辺りを見渡す俺とマーシャ。
するとファズはある方向を指さす。
「あそこよ」
「「城じゃねー(ないです)か!!!」」
ファズが指さした方向には、城と言われてもなんら遜色ない巨大な建物が建っていた。
「俺の家とはえらい違いだな」
「いや、あんたのボロ家と比べたらだいたいどの家もえらい違いになるでしょ」
この日俺はファズに2回目のチョップを繰り出した!
「#)`Д´)いたっ!」
「当然の報いだな」
「まぁとにかく行きましょう。とりあえず、フーちゃんはマクテリア家の近くで縛ってシスさんの前に突き出しましょう」
笑顔でそういうマーシャ。
もう俺は君のことがわからないよ......
ほら、ファズだってね、
「( •ω•。)و ok!」
オッケーしちゃうでしょ?
こいつの行動理念ってほんとに面白いからってだけなのか?
ファズには失礼かもしれないが、こいつにもなにか事情があるのだろう。
もし本当に「面白いから!」などと言われたらファズを馬鹿オブ馬鹿に認定せざる負えなくなる。
―マクテリア家の近くの路地でファズを縄でぐるぐる巻きにする。
「とまぁ、こんな感じでいいのか?」
「大事なのはこちら側にフーちゃんが協力しているということですからね。後はクルシュさんが何とかしてください」
「WOW!いきなり人任せ!」
マーシャも少しばかりなら協力してくれるようだが、今は神様の力を失っている。
その為、あまり頼れないと思っておいた方がいいだろう。
それに俺はまだ魔法使いを師匠とファズ、マーシャの3人しか知らない。
いきなり街の最強の魔法使いと戦えとか言われても想像ができない。
「なるようになるんじゃないの?」
「お前は気楽でいいよな......」
「(◉ ω ◉`)マァネ」
ファズと話して少しは落ち着いた。
ならば俺のやることは1つ。
胸の前で手を結び、目を閉じて天に向かって、
「神のご加護があらんことを!!!」
「神はあなたです」
「万策尽きたか......!?」
神は死んだ!!!
いや、俺が神だから死んではないけど。
実際、神の加護で魔法は効かないといっも、それはあくまで対象の相手が弱かった時の場合だ。
最強の魔法使い相手にだったらおそらく通用はしないだろう。
となれば、物理で倒すしか方法はなさそうだ。
「さぁ、行くわよ!」
「おー!」
「やるしかねぇか......」
大きな扉を開けて最初に聞いたのは雷鳴だった。
「おぉ!帰ったか!我が愛しの妹よ!」
「......えぇっと、ファズよ、こいつがシス?でいいんだよな?」
シスと思われし男は、髪がファズと同じ青色で、美少年という言葉がそのまま具現化されたような青年だった。
身長は俺より高く、髪も腰くらいの長さがある。
「えぇ、彼がマクテリア家の長男で、雷魔法を得意とするサイコス最強の魔法使い、シス兄さんよ」
若干ファズがあきれ顔になりながら説明する。
もしや完璧超人の外見のシスもファズやマーシャのように中身がアレなのか?
「ん?ファズ、もしやそこの2人に捕えられているのかい?」
「あっ、そうだった、タスケテー」
大根役者ファズが捕まっているとは思えない迫真の演技(笑)でシスに助けを求める。
流石にこれじゃバレバ......
「テメェらぶっ殺す!!!俺と戦え......!」
あ、分かった!
さてはこの世界のやつって全員馬鹿だろ!
俺が世界の秘密について知った間にシスの表情が変わる。
全体に雷鳴が轟く。
シスの周りを電気のオーラが覆い、その電気に触れた床や、花瓶が粉々に砕け散る。
え?
これやばくね?
俺触れたら死んじゃうよ?
でもさっきのやり取りでわかったことがある。
「お前......もしかしてシスコン?」
「ちがぁう!!!妹を愛しているだけだ!!!」
吠えるシス。
ただなんだろう、全く説得力がない。
こんなにも分かりやすい言葉の矛盾を聞いたのは初めてだ。
「じゃあ、シスコンってどんなやつ?」
「妹を愛しているやつの事だ」
「おんなじじゃん」
「たしかに同......ちがぁう!!!」
コントですか!!!
とニコニコしながらマーシャが言っている(ような気がする)。
若干同意しかけたシスは、うむむ......と唸っていた。
いや、もう認めればいいと思うよ?
「決して認めるわけにはいかない!そうだろう?愛しのファズよ!?」
「兄さんはシスコンじゃん」
「(ノ≧ڡ≦)ソダネ~」
え?
手のひら返し凄すぎない?
どんなけファズのこと好きなんだよ。
しかも顔文字って遺伝だったのか......
どうでもいいなぁ。
と、緊張感のないやりとりをしているとずっとニコニコしていたマーシャが口を開く。
「さっさとやって下さいよ!どうせ中庭的なところがあるんでしょ?そこでやりましょうよ!かったるいんですよこのやり取り!」
「あ、あぁ、あるからそこで勝負といこうじゃないか......」
若干押され気味のシス。
心中お察しします。
―場所は変わってマクテリア家の中庭。
「マクテリア家長男、シス・マクテリア!覚悟しろ、愛しの妹に手を出す不届き者め!!!」
互いに向かい合い、シスが威勢よく叫ぶ。
な、なんかかっこいいぞ!
俺もやってみよう!
キメ顔を作り、ポーズをとる。
「アギト家長男、クルシュ・アギト!いざ尋常に参る!」
決まった!
さぁ、今のでファズとマーシャは俺に心を奪われているはず!
「「ダサ......」」
「シスより先にてめぇらを倒す。これは決定事項だ」
かくして、俺とシスの戦いの火蓋が切って落とされた。
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