第4話

「それじゃあ行くぞ!よーいド......」


「殺す!!」


俺が言い終わるより前に魔法を使ってくるファズ。


「ひ、卑怯だぞ!?」


「ちょっと前までの自分にも同じことが言える?」


そんな事言った覚えはさらさらないが、相手は魔法使いなので先行を取られるとペースが掴めず一方的な戦いになるのは目に見えている。


「くっ、殺せ!」


「......オーク」


マーシャは何を言っているんだ?

オーク?

意味がわからない。


「あぁそう。それは立派ね。そうね?私も力を抑えることにしようかしら?」


「さ、流石はファズだぜ!惚れ惚れしちゃうなぁ〜!......ちなみに聞くまでもないと思うんですが、どれくらいの力をお出しするのでしょうか?」


「9割」


「......」


ほぼフルパワーじゃねーか。

ただでさえいつも手加減されて負けてるのに、9割なんて力出されたら俺はこの世界に存在していることが出来るのだろうか?

この際何を考えても仕方ないな!

恨むんならファズをキレさせたマーシャを恨もう!

もし生きていたならアイツに物理パンチをお見舞してやる。


「最初はグー ジャンケン......」


拳を構えて、殺気を顕にしたファズの髪が伸びていき(幻覚)、どんどん上へと登っていく。

心無しか身長も伸び(幻覚)、筋肉も付いてきているように見える(幻覚)。


「ボられるのは嫌だァァァ!!!!」


「死になさい!」


魔法のオーラが俺に当たり、消滅した。


「......え?」


「(クルシュさーん、聞こえますか?)」


「(お、おう)」


魔法のオーラが消滅したと同時に頭の中にマーシャの声が響く。

どうやらテレパシーを使ったらしい。


「(どうなってるんだ?とお思いでしょうから説明します。神になったクルシュさんには攻撃魔法や精神魔法はある程度効きません。あまりに強い魔法は別ですが......)」


え?

じゃあ何か?

俺は魔法が効かない体質になったってわけか?


「(てことは、魔法の意味が無くなった魔法使いを物理でボコれ......そういうことか?)」


「(言い方が少しあれですが、簡単に言うとそういうことですね、やっぱり嫌ですか?)」


俺は今、自分の置かれた状況を整理する。

魔法が効かない。

勝負は肉弾戦になる。

鍛えてこなかった魔法使い達とただただ肉体を鍛え上げてきた俺。

俺最強なんじゃね?


「さいっこぉだぜぇ!!!」


「ちょっと!?なんで魔法が効かないの!?」


焦るファズが何度も俺に魔法をかけようとしてくるが、神になった俺にはその全てが効いていない。

どんどん距離を詰めていき、ついにファズはドサリと地面に尻餅をつく。


「ち、ちょっと、来ないでよ......」


「フハハハハ!これまでの借りここで返させてもらうぞ!」


「......んじゃまぁ魔法使いの戦い方に反するけどいつものあんたの手を使わせてもらうわ」


「( ・∇・)What?」


ファズが右手を振りかぶる。

だから魔法は効かないって......


「必殺砂かけ!」


「ギャァァァァァァ!!!目がぁぁぁ!!!」


あれ?

なにこれ?

デジャブ?


「とん」


「は?」


目を必死で拭う俺のお腹をトンと押してくるファズ。

いったい何がしたいんだ?

そんなの痛くも痒くもな......

あれ?

この場所って確か?


「クルシュ、あんたの落とし穴ってさ......分かりやすいのよね」


「はめやがったなぁー!!!」


昨日俺が練習で掘っておいた落とし穴(深さ3m)に自分が落ちてしまった。

落とし穴、自信あったのになぁ......


「くっそ......また負けたのかよ!」


「とりあえず上がってきたら?」


「言われなくとも、っと」


今回もジャンプして3mの高さを飛び越える。

もはや慣れだな、これは。

そしてそこで待っていたのはジト目を俺に向けてくるファズだった。


「あんたさぁ、なんで私の魔法が効かないわけ?神様にでもなったっての?」


「まぁ冗談だけどね」と付け足して、ゲラゲラと笑うファズ。


「あっ、言ってはいけませ......!」


「あ、正解!」


「え?何?どういうこと?」


「はぁ〜......言っちゃいましたか......」


「あ」


「(。´・ω・)ん?」


ファズの目が点になり、マーシャが溜息をつく。

もしかして、神様になったのって言っちゃいけなかったの?


「言っちゃったのなら仕方ないですね。クルシュさんは私のあとを引き継ぎ、神様になりました。目的は魔法使いをぶっ倒すこと。ファズさんもも手伝ってくれませんか?」


こいつ今とんでもないこと言わなかったか?

魔法使いに魔法使いをぶっ倒す手伝いをしろだなんて、そんな馬鹿げた話あるわけないだろ。

しかも突然神様だなんて、そんなの信じるやつなんていないだろ。

ほら、ファズだって困ってるじゃない......


「゚+。:.゚(*゚▽゚*)゚.:。+゚」


うん、待って。

これは多分俺の見間違いだ。

そんな訳ない。

だって考えてもみてくれ?

魔法使いである自分が仲間でもある魔法使いを倒すんだぞ?

国家反逆もいいところじゃないか。

それなのにこんな得体の知れないやつの誘いを受けて目を輝かせるなんてなにかの間違いだ。

もう一回振り返ったら嫌な顔してるファズがそこにい......


「✧*。٩(ˊωˋ*)و✧*。」


こいつやる気だぁ!!!!

何かつてないほどのこのキラキラ!?

マジでやる気なの!?


「いやいやいや、ファズ!よく考えろ!?自分の仲間を倒すんだぞ?」


「私はねぇ、面白いんなら何でもやるわ」


やだ、ファズなんか男らしい!

もはやこの面白くもなんともない計画に乗ってくるなんて、ファズくらいのものだろう。


「それじゃあ、クルシュさんとファズさん、私の3人でこの計画を完遂させましょう!おー!!」


「✧٩(ˊωˋ*)و✧」


「お、おぉ......」


なんだこの珍妙なパーティは。

元神様と現神様と魔法使い。

そんな異色のパーティがここに誕生した。


「それはそうと、クルシュ?あんたちゃんと私に説明しなさいよ?」


「りょ、了解......」

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