第19話 浅野崇-2017年9月1日

「アユさ、あいつってバカなのかな」

浅野は独り言のつもりだったが、砂田が答えた。


「教育大学を出てんだから、バカってことはないだろ?」


高橋も頷く。

「うん、見た目はエロいけど、バカッてことはないっしょ」


後者の裏、三人の目の前には、この半年で職員室の引き出しから盗んだ、

アユのセクシー下着が山となっている。


浅野はニキビを潰しながら言う。

「いや、なんで、いつも下着を補充してんのかなって。

そもそもさ、引き出しに鍵かけりゃ、盗まれねーじゃん?」


高橋が言う。

「じゃあ、俺たちへのダイイイングメッセージってこと」


イが一個多いし!

アユ、別に死んでね―し。


もうさすがに3人にも、これがただの下着の形をした布切れで、

アユの使用済みなんかじゃないことも分かっていた。


最初に三人が教職員用の準備室の中にあるプールのロッカーから、

どデカイ色気の全くないベージュの下着を盗んだ後はロッカーに二重に鍵がかけられ、

準備室の鍵も取り換えられたのだ。


しかし、その代わりとでもいうかのように職員室のデスクの引き出しに、セクシーな面積の異常に少ない下着が出現した。


プールロッカーから盗んだアユのデカパンに夢を壊された気がして、文房具を盗みに引き出しを開けたのに、中から出てきたセクシーな下着に、浅野はとまどった。


だが、それをポケットに入れる誘惑には勝てなかった。


「オカズになる」


砂田も高橋も同じことを思ったはずだー。


そして、浅野の窃盗癖がクセになるのを見透かしたように、定期的に下着は引き出しに補充されたのだった。


アユ本人より、アユの体の奥底にある穴より、下着の方が、なんだかアユそのものみたいだった。


ペラペラで、面積がなくて、繊細で、エロい女神。




「なあ、ひょっとして、これ、ラブレターじゃね?」

浅野の言葉に


砂田が眼鏡を光らせて言う

「何が?」


「だから、この下着が、俺たちへのさメッセージつうか、」


浅野がそう言ったとき、


「何言ってんの、タカシぃ。バカじゃん。」


そう言って高橋が、ミニ火炎噴射機の炎を下着に噴射した。


あっという間に、化繊の下着は燃えてなくなった。


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