第17話 鈴木琢磨-2017年9月1日
ついにこの日が来た。
鈴木琢磨は4年間、引きこもった自宅の自分の
部屋の中で、ずっとこの日を待っていた。
夏、7月生まれの彼は22歳になっていた。
ベッドで布団をかぶって、テレビをつけて見ていた。
テロップが躍る。
「濃硫酸ドラム缶殺人事件
鈴木一朗さんに 無罪判決!」
アユに知らせたいー。
そう思って、すでに2か月まえにスマホを窓から投げ捨ててしまったことを思い出した。
スマホを窓から投げ捨ててしまったことに後悔はなかった。
あのスマホの中、琢磨のツイッターには誹謗中傷が溢れていた。
「人溶かしの家」
「母乳がわりに硫酸を飲んできた少年」
「お前も溶けろ、アイスみたいにでろでろに」
「言っとくけど、担任のアユ、俺の原子炉だから。
カクカクシコシコ発情器」
「あ、違った。アユは、俺たちの汚物処理場」
核原子炉の画像や、アユの顔写真とヌードグラビをコラージュした、
裸の写真がつけられていたものもあった。
そのハダカがアユじゃないと、琢磨にはすぐわかった。
右の内ももに「シカオ」がいなかったからだ。
裏アカなら、個人特定ができないとでも思っているのかー。
バカだ。
内容からして、どうせ、アユが今、担任する生徒なんだろうと琢磨は思う。
この無罪判決の報道を受けて、また何か家に起こるかもしれないー
琢磨は、2か月前、自分で割った窓ガラスを見た。
それから琢磨は、すんっとグラブに鼻を押し当て、
臭いを確かめると、
日課の腹筋をするために、ベッドに上がった。
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