第14話 アユ-2017年7月10日

トイレから出たアユは、インクで汚れた紐パンと、

インクで汚れていないTバックと、Oバックと、数十枚の下着を購入した。


アユは、下着を買った足で、そのまま鈴木の家に戻ると

インターホンを押して、声をかけた。


「琢磨さん、琢磨さん、誰に何を言われても、信じちゃダメ。

どうか、私だけを信じて。信じてほしいの!」


同じことをメモに書き、また自分の連絡先をすべて書いて、


「中田アユ」と署名して、


「中田」とハンを押した。


まだ、何か言い足りないような気がした。


赤い「中田」のハンコに、アユは思い出した。

インターホンにしがみつくように言う。


「私、まだ持っているよ! 

四年前に琢磨さんがくれた、

『鈴木琢磨』のハンコ。


『私に持っててほしい』って言ったよね?


持ってるよ、

私、まだ、琢磨さんのことを・・・」


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