第5話 浅野崇-2017年7月9日

私立星丘工業高校 校舎の裏ー


工業高校のつまんねーとこは、見渡す限り、むさ苦しい男で、

女が、教師しかいねーことだ。


ガタイがよく短髪でニキビを顔面いっぱいに腫らした浅野崇(あさのたかし)は、

心底そう思う。


でもーと思う。

担任の中田アユのことは気に入ってる。

ルックスだけで見れば、

AVでよくあるような、

クラスの男子全員相手にしてくれるような、

童顔痴女教師役とか、ぜってーハマると思う。


つーか、俺がハメたい。

しかし、アユはとにかく真面目で、固くて、隙がない。


そして想像するだけで、実際、浅野には、

アユを押し倒してどうこうするような根性もない。



でも、紐パンなんだよな。


アユの紐パン姿を想像して、鼻を伸ばした浅野に、

メガネで髪をオールバックにした砂田彰(すなだあきら)が言った。



「タカシぃ、これ、炎の色は変えられねーの?」


そう言う砂田の手には、こないだ浅野が作った、ライトセーバーもどきのミニ火炎放射器がある。



工業高校のおもしれーとこは、こういうオモチャを作れる、バカなテクがつくことだ。



「ガスに薬品を混ぜるか、炎の温度を上げりゃ、変わんじゃね? 」


夏祭りの屋台で買ったダースベイダーのお面を被ったチビの高橋幸生(たかはしゆきお)が、

ゴオオオオオと炎をあげる、ライトセーバーもどきを構えて、無邪気に言う。


浅野は言った。

「お前がやるのは勝手だが、爆発しても知らねーぞ」


「そーなーんだー」高橋が言うと、

砂田もダースベイダーのお面をかぶって、ライトセーバーもどきを構えた。


「こい、オビ・ワン!」

165センチの高橋と187㎝でひょろのっぽの砂田、二人の身長差が滑稽だ。



どう見ても、それ、ミニ・ダース・ベイダー対ダース・ベイダーだろ。



浅野は、そのミニ火炎放射器から伸びる、青白い2本の炎を見ながら、

不思議な気持ちになる。



俺、どうして、こんなにアユをいじめたいって思うんだろ。


泣かせたい、恐怖で怯えさせたいって思うんだろ。



浅野は、もやもやと変な気持ちがして、


「オラ、貸せ!」


と乱暴に砂田の手のライトセーバーもどきを奪った。


股間の前で構えると、炎がそそり立つ。


これって、炎の形をしたチン〇じゃねと浅野は思う。



「何すんだよ!」


砂田が抗議の声を上げる。


「うるせえ」


浅野は胸の中の何かを薙(な)ぎ払うように、

ライトセーバーで草を焼き払った。


「除草だよ、除草。ボランティアだよ」


「女装?」

高橋が間の抜けた声で言った。

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