第4話 アユ-2017年7月10日

翌日、アユがベッドで目を覚ました時、部屋の中は何も変わっていなかった。


昨夜、脱衣所から消えた下着も、右肩についていた「田中」も

みんな夢だったのかもー。


そう思えた。



思ったけれど、なんだか肩が重かった。


ぐっすり眠れなかったのかな。


肩を回しながら、アユは鏡台に向かって、起き抜けの顔を確かめた。

むくんだ顔、充血した目。


もう嫌になっちゃう―。


瞬きした、その瞬間、アユは右マブタが赤いのに気が付いた。


んん?


右目だけを閉じる。


その閉じた右マブタの上に


「田中」


がいた。


アユの背中と部屋の中を、ぞくりと冷たいものが駆け抜けていった。

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