第27話 空の都市2

 新しい宇宙が手に入ったとき、この文明は最高潮だったかもしれない。

 人々は熱に浮かれるように、膨大な物資と、技術の粋を集めて、空中都市を建設した。

 

 華々しい幕開け。

 空中都市に住むのは、もちろん、選ばれた人々だった。

 誇り高く、自信を持って、社会に少なからぬ貢献ができる人々。

 空中都市に住むことは最高のステータスとなった。

 だが、数世代を経るうちに、少しずつ様相は変わっていった。

 

 故郷の星では、エネルギー物資の枯渇が問題になり始めていた。

 大きなエネルギーを作り出すためには、必要な物質がいくつかあった。

 それらの物質を得るために、近隣の星は次々と採掘され、打ち捨てられていった。

 宇宙の中の星々は、構成される物質にムラがある。必要な物質がほとんど含まれない星域もある。

 宇宙規模ともなると、その調査、採掘には膨大な時間とエネルギーが必要となり、エネルギーを得るためにエネルギーを失う、という悪循環に陥りかけていた。


 空中都市は、こちら側の宇宙での、調査・採掘の拠点となった。

 技術労働者たちが大量に派遣されてきた。

 彼らは擬人と共に作業する。空中都市のステータスに縛られない技術労働者の中には、やがて都市を下りて、擬人の町へ住む者も現れ始めた。

 結果として、彼らは擬人たちに知識と教養を広げていくことになる。


 エネルギー問題は、むろん空中都市でも懸念されていた。

 なにしろ都市を丸ごと空中に浮かべてしまっている。並大抵のことではない。

 それでも、住人たちは都市を地上に下ろすことは考えなかった。

 動力源さえ得られれば、問題は解決されるのだ、と。


 都市を動かす動力は、異空間で生み出されている。

 それは、ごく小規模な宇宙だった。

 宇宙は、大小さまざまで、無数にある。そのうちのごく小さなものを利用して、エネルギーを得るのだ。

 宇宙の空間は常にエネルギーで満ちている。

 高度な技術で作り出された化合物を通して、異空間を共有する。

 空間を満たすエネルギーは、いくつもの宇宙から送りこまれる。宇宙の内部にも小さな宇宙を取り込み凝縮し、空間は複雑に入り混じる。エネルギーは空間を通り過ぎる間に大きくなっていく。それを取り出すのも化合物による。

 エネルギーの出入を制御するのがエイラーンという名の化合物だった。

 故郷の星と同じ名前だ。


 エイラーンには生体と共振する性質があった。

 より共振しやすい生体であれば、より多くのエネルギーを動かせた。

 エイラーンを扱う特別な能力をもった人がいる、ということだ。

 そして、より制御に長けた性質を持つ人間を作るために、遺伝子を操作した。


 空中都市の動力部には、24のエイラーンと、それを制御する24人の一団がいる。

 これが都市の中では最も重要な場所である。


 そして、繰り返し警報のアラームが鳴るのがその場所だった。

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