第15話 急転
車が止まった。
いつの間に眠ってしまったのか。目を開ける。
隣にいるミヤさんがケータイをバッグにしまうところだった。
「行くわよ、クウちゃん」
そう言って、ドアを開けた。
「ここ?」
窓の外をぐるりと見まわす。
少し賑やかな駅前のロータリーだった。都内に行くときいていたから、もっと都会的なところだと思っていたのに、これじゃ、今までとそんなに変わらないよ?
「ここから電車に乗るの。この先の渋滞がひどいみたいだから、こっちの方が早いのよ」
そういうことか。
僕は車を降りて、大きく伸びをした。乗っていた時間は一時間と少しくらいかな。空はもう暗くなりはじめている。
「荷物はそのままでいいわ。行くわよ」
ミヤさんは、急いでいるようだった。そういえば、最初から急いでいるようだった。このあと何か予定でもあるのかな。
都心に向かう電車は、車両が驚くほど長い。ホームも歩き疲れるほどだ。こんなのに毎日乗ってたら、疲れるだろうなあ。
僕は呑気にそんなことを思いながら、ミヤさんとサアルにただついて行った。
夕方の電車の中は、それほど人は多くなかった。長いシートにゆったりと座ることができた。
ミヤさんは、ずっと不機嫌そうな顔をしていて、お喋りが好きそうなのに、ほとんど喋らない。それがいつものことなのか、今だけなのか、まだわからない。
サアルは、不機嫌そうではないけれど、伏し目がちで、なにかの拍子に目が合ったりすれば、軽く微笑んでくれるけれど、やはり喋らない。
僕は手持無沙汰だった。
ほぼ無言のまま、車内も静かで、電車は出発した。
外はほとんど暗くなっていて、西の空の下だけが少し明るい。
なんだか腹の底がキュッと縮まるような感覚。自分がどんどん暗くなっていくのが自覚できた。
……ああ、これは、あまり良くないんじゃないかな。
都心に近づくにつれて、人は少しづつ減っていった。車内が明るい分、外が真っ暗に感じる。そんなに遅い時間じゃないのに、まるで真夜中みたいだ。
嫌だなあ……
行きたくない。
次の駅で降りてしまいたい。
そんなことを言ったら、ミヤさんには不機嫌な顔で睨まれるに違いない。それも嫌だ。
眠ってしまおう。
僕は目を閉じた。心も閉じた。
意識が遠くなりかけたとき。
暗闇。真っ黒な、闇としか言いようのない、黒。
ザワッと鳥肌が立つ。
その瞬間、ものすごい衝撃。
爆発音?
足元がない。
落ちる。
打ちのめされる。
なんだ!?
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