第6話 光量と心象、表情
あのアパートは建て替えなのか、工事中の大きなカバーで覆われた
僕は今、あの光量を追いかけている
「光の射す街」
Y.Y
自分の心象を写している。
捉えたいこと
目の届くところ
そこへ眼を向けた、その心に
足元を見つめるときに
空を見上げたいときに
路地の間に
汚いところに
心の動向がファインダーになる
眼を向けた全てが、何かの心の屑に
破片に。
写真はなぜ、表情になるのか?
地元を撮り直そうと道を歩いた。
特別、真新しいものなんてない。
古くからの顔なじみの景色がある。その建物の作り。
時折、空き地を見つけては、見つめ、失われた光景を思い出そうとする。
でも、どうやっても思い出すことはできない。
「何が、そこに在ったのか?」
面影すら消えて。
真新しい建物の道。
顔なじみでない地元の場所。
自分が置いてかれたように感じる。
子供の頃を考えてみる。
そこに居た自分を考えてみる。
自分が見ていた光景。
子供の目線の低さ。
路地裏を駆け抜けた記憶。
空き地の秘密基地。
身を隠せる場所。
友達との遊び場。
心の中に、“しまわれたこと”。
撮り直すことの出来ない事がある。
行方知らずの記憶。記憶は時間が経つと、破片になってしまう。
「夕方」という子供の頃の感覚。
電柱の街路灯の灯り。帰る時間を知らせる物。
それから少し成長して、自分の行動範囲が広がる。
でも、自分が拡大したのか、自分が薄れたのか。
心の黄金時代を考える。
平和な時代を。
独り、部屋の中に居た時間。
その狭さ、暗さ、辛さ。
夜な夜な自分が向き合ったテーブル。
引きこもっていた時。
夜中に家を出て、歩いて買いに行った自動販売機の灯り。
心の弱さ。
写真はなぜ、表情を帯びるのか?
分かり得なかった表情を帯びて
気づかなかった側面を浮き彫りにさせる
私は、あの女の笑顔をもう一度、引き出したかった
写真の中ではなく
現実に、眼前に
私に向けられた表情として、
あの女を笑顔にさせたかった
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