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 初めて会った頃、梓はまだ高校生で日焼けをした肌と切れ長な瞳、短い髪が印象的だった。店を手伝っている姿を偶然見かけて親父さんに声を掛けると、所属していたソフトボール部が大会で負けたから、退部したんだと言った。

『うちの部、弱小だったんですよ。負けちゃったけど今はキツイ練習もないし、楽ですよ』

 そう言った顔は、全然“楽”って顔じゃなかったのを覚えている。

 負けん気が強くて、やると一度決めたことは絶対に曲げない。男勝りと言うより、男より男らしい。は、言いすぎか。

はっきりとサバサバした性格は、男女ともに好感を持たれ、かなりモテていた。本当、俺よりも。うん。

 今の旦那の、橘君とは五年の付き合いになると言っていた。と言っても高校の同級生で、家が近所の肉屋の息子だ。ちなみに俺も知っているし、よく飲みに来てくれる。

 梓とは違う、少し気の小さい子だけど、そこがバランスの取れているというか、何と言うか。足りないところを補えているというか、ぴったりとお似合いなのだ。

 運命の相手というのは、こういうことか。とか、素直に思えるくらい。もちろん運命だからとスムーズに行くってわけではないのだけど。こうして結ばれるまでに紆余曲折あったわけだし。

「まぁ、なんにせよ、幸せそうで良かった」

「そうね、二人とも幸せそうだったわ」

 教会からガーデンに出て待っていると、わぁ、と歓声が上がった。

 梓が橘君に手を引かれて芝生に降り立つ。髪飾りにはふんだんに生花が使われていた。沢山の種類の花なのに、そのどれもが純白色のものだった。

「それでは集合写真を撮影いたしますので、皆さまお集まりくださーい!」

 スタッフさんが声を掛ける。ミケと共に歩み寄った。小さな子供や女性が多い子もあり、きゃっきゃと賑やかな雰囲気だ。和やかで穏やかで温かで、笑顔が溢れていて二人らしいな、と思った。

 きっとこの二人ならこの先もずっと素敵な夫婦でいられるのだろうと思うし、そうなって欲しい。

「今日は本当におめでとう」

「はなちゃん、ミケちゃん、今日は来てくれてありがとうね」

 バシバシ、と肩を叩く強さは純白のドレスを纏っていても変わらないか。

「幸せになってくれよ」

「言われなくても」

 ニッと笑う顔はやっぱり変わらなくて、幸せな気持ちが胸に広がった。



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