第6話

約束の居酒屋に入りキョロキョロしていると、すでに高校のときからの悪友のダイチはすでに飲み始めていた。


「お、来たか。遅かったじゃねーか。」

「ごめん、すぐ出たんだけどな」


ダイチの向かいに座り、早速メニューを手に取った。


「なに見てんだよ!まずはビールに決まってんだろ!すみませーん!」


ダイチは、メニューを取り上げ大声で店員を呼んだ。

こいつは、いつもこうだ。

だから、一緒にいて楽なとこもあるんだけど。


「で?」


ダイチは、ニヤニヤしながら俺に向き直った。


「は?」

「何があった?」

「はい?」

「とぼけんなよ。いきなり飲みに誘うとかなんかあったんだろ?何年お前と付き合ってると思ってんだよ?」


ダイチは、タバコに火をつけ俺の顔を覗き込む。


「別になんもねぇよ」

「ふぅーん」

「何だよ」

「別にぃー」


お待たせしましたぁー!

そこへやたら元気な店員が来てくれて助かった。


「ビールと、俺はチューハイおかわりね」


かしこまりましたぁー!

店員が去ると、ダイチはまたニヤニヤしながら俺の顔をみる。


「なに?失恋でもしたか?」

「は?」

「死にそうな顔してるぜ」


そう言うとをガハハと豪快に笑う。


「いや、別に失恋とか…」

「いいって!わかったから!よし!俺様が合コンをセッティングしてやろう!」

「はぁ???」

「失恋に1番いい薬は新しい出会いに決まってんだろーが!」

「いやいや、別に俺は…」

「いいっていいって!俺様に任せておきなさい!」


こうなるとダイチは人の話なんか聞きゃしない。


「はぁ…」


その後、ダイチは特に詮索してくるわけでもなくひたすら馬鹿話をしながら2人で遅くまで飲んだ。


家に帰り着いたのは、深夜2時をまわった頃だった。

冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し一気に飲んだ。

ベッドに倒れ込み、そのまま眠ってしまった。


夢を見た。

白い部屋の真ん中で、リュウがうずくまり泣いている。

リュウ…

声をかけたいのに、喉がつまって言葉にならない。

リュウは立ち上がり、去っていく。

「待って!待って!リュウ…!」


そこで目が覚めた。


「?」


頬が濡れてる。

俺、泣いてる?


ブー ブー ブー


携帯のバイブの音がなる。


「はい」

「なに、寝てたの?」


ダイチだ。


「あー、今起きた。なに?」

「合コン決まったから」

「は?」

「昨日言ってただろ。来週の金曜日な。よろしく!」


それだけ言うと電話が切れた。


「はぁ…マジかよ…」


俺は、ため息をついてベッドにもぐりこみもう一度眠った。


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