第4話


「へぇー、こんなとこに住んでんだね。意外と綺麗にしてんじゃん」

「意外とってなんだよ。じゃなくて、なんで俺の家知ってんだよ」

「こないだ教えてくれたじゃん」

「部屋まで教えてねぇよ」

「だって見てたもん。部屋に入るとこ」

「は?公園からそこまで見えないだろ」

「ふふふ」


意味深な笑い。

なんなんだよ。

完全に振り回されてる。

というか、弄ばれてるのか。


「まぁいいや。なんで俺に会いたかったとか言ったわけ?」

「ふふふ…お兄さんだって俺に会いたかったんでしょ?」

「な、なにいっ…」


ふいに視界を遮られ、唇にやわらかいものが触れた。

何が起こったのか、最初は分からなかった。


唇?


リュウの唇…


リュウが、俺にキスをしている。

なんで?

なんで?

考える暇もなく、俺は、リュウを抱き寄せキスを受け入れていた。

唇を離すと、リュウはクスクスと笑った。

俺は、唇が離れたことに激しい寂しさを覚えつつ「ああこの笑顔だ、俺が会いたかったのは」と

そんなことを考えていた。


「マリオってさ、俺のこと好きでしょ」


まっすぐに淀みなく核心をついてきやがる。


「は?俺はホモじゃねーよ」

「じゃあさっきのは?俺のキス受け入れたよね?っていうかどっちかというと積極的だったし」

「は?お前がしてきたんだろ!なにいってんだよ!」

「そっか…違うのか…」


さっきまでクスクスと笑ってた笑顔が曇る。

うつむくその横顔は、初めて出会ったあの夜の寂しそうな横顔そのものだった。


考えるより早く体が動いていた。


気づいたら俺はリュウを後ろから抱きしめていた。


リュウは抱きしめる俺の腕にそっと手を添えてクスッと笑った。

俺は構わずリュウを抱きしめる。


「ねぇ、痛いよ」

「あ、ご、ごめん!」


俺は、ハッとして体を離した。


「やっぱ、俺のこと好きなんじゃん?」


リュウは、意地悪な目で俯く俺の顔を覗き込む。

俺は何も言えなかった。

そうだ、俺は、リュウのことが…。


「リュウ…」


今度は俺の方からリュウにキスをした。

さっきとは違う、お互いを求め合う激しい口づけ。

俺の舌をリュウが受け入れ、リュウの舌を俺が受け入れ、絡み合う、求め合う。

長い長いキス。

俺はそのままリュウをベッドへ押し倒した。


俺は、何をやってるんだ。

リュウは男なのに…男なのに…。


混乱する脳内とは裏腹に、俺はリュウのTシャツを脱がせ、俺もシャツを脱ぎ捨てた。


止まらないんだ。

俺は…リュウを…


あらわになったリュウの白い肌。

その胸元に唇を這わせる。

ピクンと小さく反応して、小さく吐息を漏らすリュウ。

その姿が愛おしくてたまらない。

リュウが少し微笑んで俺を見つめる。

唇を頬、首筋、胸元へと移していく。

荒くなる息遣い。


俺は無我夢中でリュウを抱いた。




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