第3話
あれから、リュウと名乗った彼を見ることはなかった。
リュウと出会ったコンビニの前を通るたびに、リュウの姿を探す自分が嫌になる。
今、リュウは何をしてるんだろうか。
ていうか、俺は何を考えてるんだろう。
リュウがどこで何をしてたって、自分にはまったく関係ないことだ。
でも…
ここ数日同じことを考えては、打消し、また考えての繰り返しで頭がおかしくなりそうだ。
会いたい…
あの寂しそうな目も、あのクスクス笑う意地悪そうな笑顔も、もう一度、彼に…
リュウに会いたい…
もはや、これはもう否定のしようがない、自分の感情の真実なのだ。
「はぁ…なんなんだよ…」
仕事の疲れもあり、疲労感がひどい。
深いため息をつきながら、アパートの階段をあがると、そこに目を疑うような光景があった。
リュウがいる。
俺の部屋の前にうつむいて座ってる。
「え…なんで?」
トクン…!
痛いぐらいに鼓動が強く打つ。
リュウはゆっくりと顔をあげてこちらをみると、にっこりと微笑んだ。
「あ、おかえり!マリオ!」
パッと立ち上がると、リュウは俺に駆け寄り抱きついてきた。
「え?ちょ!なに?なにしてんの?」
あまりにも突然に出来事に、何が起こってるのかすぐには理解できなかった。
「帰ってくるの待ってたんだ」
抱きついたまま、俺のことを上目遣いで見るリュウ。
カァァーっと顔が熱くなる。
「とりあえず、離せよ。なんなんだよ」
リュウは寂しそうに体を離すと、もう一度俺を上目遣いで見た。
やめろ…やめてくれ…そんな目で俺を…
「会いたかったんだ、マリオに」
え?今なんて?
耳を疑った。
俺に?会いたい?なんで?
「家に入れてくんないの?」
「な、なんでだよ」
そこへ、他のアパートの住人が階段を上がってるくる音がした。
「いいからもう入れよ!」
俺は慌ててリュウを家の中へ入れた。
考えてみれば、いや考えなくても別に慌てる要素なんてどこにもないのに。
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