起きると隣に巳鏡がいた。これはこれまでと明らかに違う。どう言う事だ。そもそもさっき俺は死んだのか?

 多くの謎を頭に抱えながらも俺は巳鏡を起こした。

 「巳鏡、おい巳鏡」

 「あと5時間・・・・・・」

 「起きろって!」

 「うーん・・・・・・」

 その後、何度かやってようやく巳鏡が起き上がった。

 「なんでうちにいるの?」

 「こっちのセリフだ」

 全く状況を理解していなかった。だがこれで世界が変わった可能性がある。もしかすると未来に進んだ可能性も。淡い希望を抱いて学校へと行く事を提案する。

 「うん、行ってみよう」

 巳鏡と一緒に学校へ。だが俺の思いとは違った意味で学校は変わっていた。いや変わりすぎていた。

 誰もいない。夏休みに入ったからとかそう言うわけではないだろう。事実、ここに来るまでも誰にも会わなかった。そして教室に来てもまだ誰とも出会わない。カレンダー表示の付いた時計は昨日の日付のままだ。なにかがおかしい。だがそれが何か分からない!

 「まあ座れば?」

 巳鏡に促されて俺は座った。そして目の前に座るこの少し背の高い女子について考える。入学式で見て、それから色々とあって今ではこの少女が死なない、未来に進める道を探している。

 だがこの現状はなんだ?彼女が死ぬことは阻止できたが未来にも進めず、かと言って変化が起こせるでもなく。挙句には変化した日常は誰もいない世界じゃないか。

 ぼーっと見ていた俺をどう思ったのか巳鏡が言う。

 「変わっちゃったね、世界」

 「ああ。変わったな」

 もう出れないのかな。そう言う巳鏡を見て俺は自分を情けなく思った。どうにかしてやると、戦うと決めてこれだ。まずはここからだったら。

 「ここにい続けても何かあるとは思えない。出よう」

 「どこに行くの?」

 「とにかく出るんだ」

 巳鏡の手を引いて教室を出る。階段を降りて学校の外へ出ると、俺は駅へ向かおうとした。

 しかし駅へと向かう道を歩き出した時点で俺は見えない壁にぶつかったのだった。

 「なんだよ・・・・・・これ」

 どうやっても進めない。ガラス板でも存在するかのようだ。なんでだ!?

 「この町から出さないって事なのかな」

 巳鏡が言う。

 この町からは出られないとしても家には帰れるのか?今日のスタート地点である家には。行けない道の基準がわからない以上試すしかないのか。

 「一旦家に戻ってみよう」

 「なんで?」

 「違う町には行けない事が分かった。ならどこからどこまでが行ける範囲か調べれば、その範囲内にこれをやっている奴がいる可能性が高い」

 「よく分からないけどわかった。行ってみよう」

 俺たちは移動した。そして家へと到着し、俺がドアに手をかけるとその場に閃光が走り・・・・・・俺は教室にいた。

 なんだって言うんだ!?家へはもう帰れないということか。いや、むしろ学校へと呼び寄せられている?最初はずっと家からスタートしていたのに移動距離も縮まって今度は学校からスタートするとは。休みを勝ち取りたいのに学校から出られないとか笑えないぜ。

 そこで俺はふと気付いた。巳鏡がいない。先ほどまで一緒にいた巳鏡がいないのだ。

 「巳鏡!」

 呼んではみるものの返事はなく、俺の声だけが不気味に響いていた。

 とにかくここを出て探さなければ。俺は教室を出た。階段を降り、昇降口へと向かう。そして出ようとしたが、出れなかった。

 ピクリとも動かない。まるで絵のようにガチガチに固まり、この昇降口は俺を出ることを拒否した。

 だが出られないなら巳鏡も中にいると言う事だ。その事実が分かっただけでもよしとする。

 俺は一階から探し始めた。職員室、保健室、宿直室・・・・・・そしてその並びの中になんのプレートも付いていない部屋を見つけた。見たことがない部屋だ。いや、そもそも一階に余り来たことが無いし気付いていなかっただけか。

 そのドアを開けると、中には階段があった。地下室へと続いているようだ。

 幸いにしてホラーゲームの様に足元が見えない暗さではない。むしろ煌々こうこうとした感じで周囲までよく見える。

 俺は不思議とこの下に降りなければならない気持ちになっていた。何が俺の事をそのような気持ちにさせたのかは分からない。強いて言えばこの下に巳鏡がいる、そんな気がしたのだ。

 俺は一歩一歩階段を降りて行く。これまでのループを思い出しながら。

 始まりは学校で巳鏡が殺された事だった。そこからループが始まり、俺も幾度か殺されて今こうして地下室へと向かっている。

 地下室には何があるのだろうか。ここまで度々俺たちを妨害した奴がいるのか。それとも何か・・・・・・・新しいループが始まるのか。

 そもそももう日付以外はループしていないのだから新しかろうが今のループだろうが余り意味が無いような気もするのだが。

 考えながら歩いていると、俺はとうとう扉の前に到着した。自分の身長よりも大きい扉で、かなり重そうである。

 扉に手をかけると意外なほどすんなりとドアは開き、その中には巳鏡がいた。

 「合格だよ。おめでとう」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る