試行錯誤
結果から言えば、人のいるところに行くという対策はある意味成功した。
ある意味と言うのはとても簡単な事で、今回は巳鏡が殺されなかったからだ。そして巳鏡が殺されずとも世界は変わらずループした。この事から巳鏡が殺されるのがループの原因ではない事が判明した。
では誰が死んだのか?今回殺されたのは柏崎だった。流れはこうだ。
「人のいるところに行くはいいけど当てはあるのか?巳鏡」
「うーん。繁華街にでも行けばいいかなとは思っているけど」
繁華街か。確かに人が多いというところでは最適な場所かも知れないな。
「わかった。すぐに移動しよう」
そして二人で移動する。流石に大都会ではないので多すぎると言う程ではないが人がいる繁華街に着いた時点では午後9時過ぎ。まだ2時間ほど時間があった。
「どうやって時間潰す?」
「ゲーセンとかどうだ?面白いらしいぞ」
「行ったことないよ」
「実は俺もだ」
なんとも頼りない二人だった。
「一旦喫茶店に行こうよ」
巳鏡の言葉により大通りに面した喫茶店へ。これからの行動を計画する。
「とりあえず最終的には人のいるところにいよう。ゲーセンとかコンビニとか、いくらでもあるだろうし。最悪そこの大通りに出るだけでも違うと思う」
「これまで人のいるところに進んでいくなんて思っても無かったからなるべく何も無いようなところばかり選んでたけど、何か変わるのかな」
「わからん。とにかくやるんだ」
その後は、沈黙。時間を待った。
そろそろ時間だというところで二人はどちらからともなく席を立った。
「そこの大通りにしよう」
俺は提案する。ここであれば目撃者も比較的多く、障害物も多い。もしかしすると巳鏡が殺されないで済む可能性がある。上手くいってくれ。
「わかった」
巳鏡も素直に従った。後は時間まで適当にウロウロするだけだ。
「ねえ」
「どうした」
「こんな時じゃなくてさ。今度はちゃんとデートとしてここに来たいね」
どれだけの思いで今巳鏡はその一言を言っただろうか。その事を考えるとダメだとは言えなかった。元からダメだと言う気は一切無かったが。
「約束だよ」
巳鏡が笑顔を向けて来る。本当にこいつが殺される理由が分からない。絶対に俺がどうにかしてやる。しかし時間はやって来る。
「時間だ」
その時が巳鏡の口から示された。そこからが今回は違ったのだ。
「あれ?巳鏡さん?と」
俺たちは突然声をかけられた。柏崎だ。
「お前、こんなところで何してるんだ?」
「バイトの帰りだよ。そっちはやっぱりデート?いいねえいいねえ」
ニヤニヤしながらつついてくる。今はそれどころじゃ無い。早く引き離さなければこいつ自身が巳鏡を殺す可能性だってある。
「ねえ、巳鏡さ」
そこから先はスローモーションだった。巳鏡に呼びかけた柏崎がゆっくりと倒れていく。そして倒れた柏崎の背には巨大なハサミが突き刺さっていた。
「柏崎?」
返事は無い。どうやら一撃で心臓までをも貫いたらしい。はっとなり巳鏡を見る。巳鏡は生きていた。
「柏崎さん・・・・・・」
苦い顔をしている。その直後、世界は暗転し俺はベッドの上にいた。何が起きたのか分からず、ループした事に気づくのに少しかかった。
そのまま登校する。巳鏡の腕を掴んでそのまま外へ。話したいこともあったし何より、昨日とはまた違う行動を取る必要もあった。そうでなければ昨日と同じ展開になるかもしれないし、そうでなくとも新しいパターンがわかるだろう。
「巳鏡」
腕を引きながら巳鏡に話しかける。
「何?」
「昨日どうだった?」
「死ななかったよ」
これではっきりした。巳鏡が生きているか殺されたかに関わらずこの世界はループするのだ。つまり他に何か原因がある。それを見つけなければ永遠にこのループからは出られないだろう。それだけでも試した甲斐はあったというものだ。
下駄箱までたどり着く。
「どこに行くの?」
巳鏡の声に答える。
「昨日と違う場所だ」
昨日よりも更に前の時間から違う動きをして変化を見る。まずはこれだろう。とにかく外だ。靴を出す。
パラリ。
何かが落ちた。俺はそれをこんな時になんだラブレターか?と思いながら持ち上げる。もちろん違った。そこには一言赤い文字でこう書いてあったのだった。
『巳鏡かがみを一切信じるな』
「なんだよ・・・・・・これ」
俺は立ち尽くす。一体何が動いてるっていうんだ?
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