ここから
「さて、これからどうするか」
昼に中庭で話した後、俺たちは教室に一旦戻って話を続けていた。もう明日から夏休みで短縮だった事もあり、教室は話をするのに丁度良かったからだ。
「これからだよね」
「ああ。俺は二つ考えがある」
「どんな?」
「まず昨日俺の下駄箱に入っていた手紙、あれの出し主を捜すって言うのが一つ」
あの手紙は明らかに巳鏡のこの状態を知っていた。と言う事は確実に俺と巳鏡以外にもこのループに誰かがいるはずだ。そいつが敵か味方かは分からないが捜しておきたい。
「もう一つは巳鏡が死なないパターンを試してみるんだ」
それを聞いて巳鏡が立ち上がる。
「それが出来てたらこんなことになってない!」
ああそうだろうとも。これまで一人で頑張ってきたんだもんな。こういう言い方も提案も間違ってるのは分かってるさ。
「あくまで最終目標だ。今日からしばらくは一緒に過ごそう。もしかすると二人でいたら何か気付くことがあるかもしれないしな」
冷静に、淡々と告げる。相手が感情的になっているならこちらは冷静に対応しなければ。
「だからまず、これまでどうやって殺されたのかを教えてくれないか。もしかしたら気づいていない共通点もあるかも知れない」
巳鏡の目を見て訴える。
「・・・・・・分かったよ」
そう言って椅子に座りなおし、巳鏡は語り出した。
圧殺、刺殺、轢殺、絞殺、落下死、溺死等。聞けば聞くほど辛い気分になってくる。それだけの痛みを受けるなにかをしたと言うのか。俺の知っている限り巳鏡はそんな痛みを受けるほど悪いやつではない。これを仕掛けた奴は一体なんなんだ。
もう今日もさほど時間が無くなってきていた。殺害対策を考える。どこにいても何かしらの要素で死ぬなら。
「何もない空き地の真ん中にいるって言うのはどうだ?」
「やった事ないよ。やってみようか」
こうして今日とりあえず何もないところではどうなるかを試す事にして移動を始める。聞けば千回ほど死んでからはどうせ回避できないのだから、とそもそも対策自体を諦めているところもあったようだ。
そうして二人で学校から出るとき、俺の下駄箱を確認する。手紙がまた入っていた。
「こいつはもしかして毎回入れているのか?」
「記憶が無いと同じ行動しかしないからこの手紙の内容が一緒だったら記憶がない人の可能性もあるかもね。ただ単に同じ行動を繰り返してたまたま今回君が気付いたみたいなパターン」
手紙を開く。その手紙の内容は至ってシンプル。空白が眩しいテストだったら確実に赤点の文字の並びだった。
『やめておけ』
「昨日と内容が違う・・・・・・」
やはりこの手紙を出している人間は俺たちが同じ日を繰り返している事を知っているのだ。そしてこの繰り返しに俺を引き込むために昨日はあんな手紙を出した。そう考えるのが妥当だろう。つまりこいつもいつからかは分からないが同じ一日を繰り返し続けている。
その事実がわかったところで二人で空き地を探す。明日から夏休みと言う今の日に二人して空き地を探す傍目には不審な高校生たちだった。
夜も9時になろうかという頃ようやく丁度良い空き地を発見した。何も置いておらず、虫や人が潜むような草もなく、家の隣だったり駐車場の隣だったりもしない。条件としては最高だ。この状況からどうやれば死ねるって言うんだ。
「ここで待ってみよう」
「分かった」
二人でその時を待つ。どこから来る・・・・・・緊張感だけがひたすら高まって行く。来るなら来い、絶対止めてやる。
「こんなにさ」
「どうした」
「こんなに真剣になってくれると思わなかった。君が」
いつでも俺は真剣なんだがそれが伝わっていないとは悲しい限りだ。夏休みに入ったら大いに俺の真剣さを教えてやることにしよう。
「夏休み、早く来るといいな」
「ああ、きっとすぐに来させてやる」
緊張感の中、会話をする。
「そろそろだよ」
巳鏡が言ってからすぐだった。
突然閃光がその場に発生し、次の瞬間俺はベッドの上にいた。
「なんなんだよ・・・・・・!」
頭をかきむしりながら呟く。
あの光は何なんだ。宇宙からのビームか?あんなのがあるならどうやっても殺されないなんて無理じゃないか。まさか一気に二人殺すパターンになってるなんて思いもしなかった。最悪俺が死んで巳鏡を助ければ多少はチャンスがあるかと思ったのにあれではどうしようもない。くそっ。
最悪の気分を抱えたままで登校する。既に巳鏡がいた。
「まあ、ああやって何かしら、何もなくても起きるんだよ。悲しいことにね」
「ああ。これをやってるやつはどうやら俺たちに喧嘩を売りたいらしいな」
そっちがその気ならやってやる。首根っこを捕まえてこれまでの事を全部謝って元に戻すまで戦ってやるぜ。
心を新たに戦いを決意し直したのだった。
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