うん、そう
どうやって家に帰ったのか次に俺が目覚めたのは自分のベッドの中だった。
夜23時に学校の中庭に呼び出されて見たのは友人の死だとは何という冗談か。夢ならもっと楽しく嬉しい夢であってほしいもんだなどと思う。
どうせ今日から夏休みだ、もう少し寝ようと二度寝の準備をしたところで親の声が聞こえてくる。学校へ行けと仰せだが今日から夏休み、いく必要は無かろうと無視をする。
しかししつこい。こうなればカレンダーを見せて説得するしかないな。
早速携帯電話のカレンダー機能で今日の日付を確認して見る。俺は目を疑った。なぜならそこにはなんと昨日の日付があるでは無いか。今日は昨日なわけだ。それじゃあまだ夏休みじゃないな。
少々強引に自分に言い聞かせて納得したところで学校に行く用意を始める。少しだけの疑問を持って服を着替えて疑問符を浮かべながらの登校となった。
同じく登校して着た巳鏡と目が合う。こいつはどうなのだろうか。
「巳鏡」
「後で話そ。お昼に中庭で」
「わかった」
聞きたい事は山ほどあった。なぜまた昨日になったのか、昨日俺を呼び出したのは誰か。わからない事だらけだ。
やがて昼となる。先に行ってしまった巳鏡を追う形で俺も中庭へと向かった。
「来たね」
「ああ」
「まず、ごめんね。変な事に巻きこんじゃって」
「これはなんなんだ?昨日に戻っちまったけど」
「正確に言えば戻ったんじゃなくって同じ日を繰り返してるんだよ。私が死ぬところを起点にして」
「なんで」
「分からない」
「もう既に何回か繰り返してるのか?」
「万までは数えてたけどもう数えてないよ。だからわからない」
悲しげに瞳を揺らしながら言う。こいつはずっと一人でこの日を繰り返して来たと言うのだ。どれだけの重圧であったろうか。
「ずっとさ。皆にとって今日って明日には昨日になって今はすぐにさっきになって。進んで行くけどわたしだけ昨日っていう今日を繰り返し続けて。君にも毎日同じ事を言われ続けて辛かったんだ」
「巳鏡」
「でもずっと巻き込んじゃいけないって。自分で解決しなきゃって頑張ろうとしたけどやっぱり無理で」
ここまで言うと静かに涙を流し始めた。
「でも結局誰かのせいで巻き込んじゃった。今すごく悲しいけどなんだか嬉しくて・・・・・・どう言ったらいいのかなあ」
「わからない。俺には・・・・・・」
これまでずっと一人でやってきたために緊張をしていたのだろう。巳鏡は泣き続けた。
しばらくして。
「ありがとう。もう大丈夫」
とても大丈夫には見えない顔で巳鏡が言う。
「さっき言った通り私はあの時間に殺されて、また同じ一日が始まるの。これまでは君も繰り返す一日の一部だったけど私が殺されるところを見たからか記憶を持ったままになったってところかな」
「ああ、これまで特にそれ以外変わった事をしていないし昨日の記憶からあるって事はおそらくあれがきっかけだろうと思う」
これが昨日、いや今日か。ややこしい状況になってしまっているがとにかく巳鏡の元気のなかった理由か。そりゃ数えてないくらいの回数同じ日を繰り返せばそうもなるだろう。俺だったら自殺してる可能性もある。
「自殺は出来ないようになってるよ」
俺の心見透かしたかのような発言に少しドキッとする。
「昨日はたまたま銃で撃たれたみたいだけど、どこに逃げても絶対に死ぬようになってるんだ」
「絶対に?」
「うん、そう。海外に逃げても飛行機からわたしだけ落とされて死ぬんだもん。参っちゃったよ」
あっさりと言うがそれはどれだけの恐怖だろうか。どこにいれも何をしてても決まった時間に必ず死んで次の今日が始まると言うのは。
「で、もうどうでもいいやってここ数千日は思ってたんだけど、まさか君が巻き込まれるなんて。計算外だよ」
そんな風に話す彼女を見て、俺は自然と口にしていた。
「二人で夏休み、迎えようぜ。今はまだどうしたらいいか分からないけど、どうにかしよう。二人で今日から抜け出すんだ」
「怒ってないの?」
巳鏡が驚いている。そりゃあ多少はこの状況に巻き込まれた事に対して怒る奴もいるだろうが起きた事は仕方がないと俺は思う。むしろ今の状況、これも何かの縁だろう。
「むしろもう少し早く俺が何か出来れば良かったな。すまん」
「ううん。わたしは君だけは巻き込まないように気をつけていたしそれは仕方ないよ。今となっては水の泡になっちゃったけど」
力無く笑う巳鏡。
「まあ何にせよだ」
手を巳鏡に伸ばす。
「よろしくな。明日がやってくるまで」
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