たべる

適当に店を決めて、入った。

参鶏湯を頼んで、来るまで待つ。

「何か、最近いいことあった?」

突然ユキが聞いてきた。なんだその質問。

「んー、いいこと...いいこと...あったらいいなぁ」

君とね、と言いたいとこだけど。

なんでそんな寂しいこと言うの、と笑われた。寂しいのか、私...

参鶏湯が来た。お互いに写真を撮る。だけどこの写真を公開する訳でもない。だけど、撮る。

ユキは小食だ。その上運動もするからスタイルが良い。見習うところばかりだ。

食べ始める。隣の女の子2人組が彼氏の悪口を言い合っている。携帯のパスワードを変えただとか、連絡をしても返事が遅いだとか。きっとその男、浮気してないにしろ他に好きな子いるんだろうな、とか考えてると可哀そうになってきた。

別れちゃえばいい。

でも、それが自分の事となると、そう簡単にもいかないものだ。

私も昔は...

「キキ?どした?」

ユキがこっちを見ていた。ずいぶんぼんやりと脱線していたようだ。

「ごめん、ボーっとしてた」

「早く食べないと、冷めちゃうよ」

笑ってそう言って私の器によそってくれる。

美味しい。だけど彼とご飯を食べているとお腹がすぐに満たされる。どうしてなのだろう。

はぁ、目の前にユキがいる。この時間はあっと言う間に終わってしまう。

「美味しいね」

「うん!美味しい」

きっと今週一の笑顔を見せてしまいながら、私は鶏肉を食べた。

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