プロローグ2

 俺がチャイムの音で目が覚めたのは、午後6時。寝すぎたな。頭痛い。

 この時間に来るのはネットショッピングの配達員さんか、宗教の勧誘に来たおばちゃんぐらいだ。あともう1人いたかな。

 俺がベッドから起きるとバキッて音が聞こえたけど気にしない。

 玄関の前の廊下の壁についているモニターを見ると、高校の制服姿のショートカットの美少女が映っていた。顔はかわいい系。うん、可愛いな。


 俺がドアを開けると、彼女、照葉椎奈てるはしいなは少し眉をピクッとさせた。


「昨日ぶり、誠士郎。チャイム四回も……ぷふっ」


「なんだよいきなり笑って」


 俺に会えて感激のあまり笑みがこぼれたとかなら許してやるけど。


「誠士郎に会えて感激のあまり笑みがこぼれたの」


 棒読みありがとうございます。


「礼を言われるようなことじゃないわ」


「俺の心と会話するな」


「誠士郎にしか使えないのに…」


「プライバシーの権利って知ってる?」


 照葉椎奈は、俺の幼馴染で、それ以上でもそれ以下でもない。

 学校に来ない俺を心配してよく家に来てくれる優しい心の持ち主だが、幼い頃から磨いてきたからかいスキルで俺をもてあそぶ厄介な性格の持ち主でもある。


 さて、俺のプライバシーがさっき侵害されていた件。これは椎奈が持つ異能力が関係してきている。

 椎奈は『伝心でんしん』という能力を持つ異能者であり、あの異能者警察組織であるPUの情報管理局司令課というところで勤務しているらしい。

伝心でんしん』は特定の相手とテレパシーが出来る能力で、ありそうで結構珍しい能力だ。それでPUに目をつけられたらしい。

 勘のいい人は気づいただろうが、この能力、なんて便利で法に触れるような機能はついていない。

 ならばなぜ、俺の心は読めるのか。

 それは本人にも分からないらしく、俺にもギザのピラミッドがどうやって建設されたかぐらい分からない。ただ″読める″という結果がそこにあるだけで、原因は闇の中だ。


「相変わらずキレイな部屋ね。男の独り暮らしとは思えない。女でもいるの?」


「俺が彼女いない歴=年齢なのはお前が一番よく知ってるだろ」


「うん、知ってる」


 うん、じゃあ言わないで。心がしゅんってなるから。


「ねえ、一緒に世界を守らない?」


 椎奈がソファに座るなり告げたその言葉はあまりにも唐突で突飛なもので、俺の目を見開かさせるのには充分すぎるものだった。

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