第11話 最終決戦


 日々鍛錬した剣と一応覚えた似た呪文それで皮一枚で勝った。さて、このキリーレイはどうしようリスク管理の為に殺しときたいけど、原作では仲間になるから殺せない。


「アヤイズミ先生、少しだけ自分の芯が見えた気がしました」

 時限式の蘇生魔術をかけてエル・ウルスに送り返しておいた。念のために「命の貸し一つ」とメモ書きをつけておいたので彼の性格ならば多分大丈夫だろう。


 キリーレイ、とても巧く速い魔術戦士だった。


 某月某日。聖明歴515年、ついにこの日が来た。エル・ウルスから全世界に向けての宣戦布告。

「超大国エル・ウルスめ、焦ったな。レイメイを中心とする我らが連合が迎え撃とう」

 現在執務室、ノックスが強気である。


 原作では七部の主人公クナピムカが頑張って諸国を説得して不利な中戦うのだが今回は各国を強化しているのでいい戦いになるくらいの戦力差だ。

「ノックス、魔眼使いを集めてすぐにウアノスを討つ準備をしてくれ」

「リスクが大きすぎるな」


「ウアノスが出てこられたら、どれだけ戦力があってどんな運用をしようと無意味だぞ。これが唯一勝算のありそうな策だ」

「話を聞こう」



 教皇ウアノスの魔眼の能力は法治、法域という結界を張りその中ではあらゆる法則を支配できる。つまり、ルールを自分の好き勝手にで決めてゲームできる能力だ。


 原作では、この事を知らずに集まった主人公たちが一か八かの奇襲をしてやられかけてクナピムカの幸運の魔眼が発動し、偶然が重なった結果アポスの攻撃が決まり勝っている。


「法域? 法則の支配? 何だそれはそもそも勝負が成立するのか」

「しないな。過去一度ウアノスは軍勢に対して法域を発動した際は一方的な結果だったそうだ」

「聞かないか、エル・ウルスによる歴史改ざんか」

 零部で本人はそのことを悔やんでいたが、ウアノス自身エル・ウルスが一番大切らしいので追い詰められたらやりかねない。


「解かった。そっちの方は任せる」

 ノックスからそう言われ俺も準備を整えた。



 某月某日。財団所有の空中戦艦。身体強化の魔眼持ちのアポス、防御障壁の魔眼持ちのメテル、魔力生成の魔眼持ちのソウト、体力回復の魔眼持ちのノス、修理の魔眼持ちのエルシス情報の魔眼持ちのコンネイ、幸運の魔眼持ちのクナピムカが集い。


 現在ラ・パイソの教皇府へと向かっている。


 また、キリーレイもメテルの説得によりエル・ウルス内の和平派をまとめる手伝いをしてくれているという報告を受けた。

「良く集まってくれた」


 俺の言葉に皆うなずく。自己紹介をしあったり、戦いへの意気込みを語ったり思い思いに決戦までの時間を過ごした。



 教皇府に突撃して、教皇の間まで駆け上がり、その場所で待っていた青年にソウトが杖を向けて言い放つ。

「教皇ウアノス、師匠の仇を討たせてもらうぞ!」


「乾坤一擲の勝負に出たか、それとも説得かどちらにしろ止まる訳にはいかない。

エル・ウルスの民が為の理想郷を築くのみ。ここまで来た諸君らへの礼として全力を持って相手をしよう」


 青年、教皇ウアノスがそう言うと法域をこの部屋に展開した。

 



 知っていたこととはいえキツイ、有利になるたびにルールが変わる戦い。俺も皆も鍛えたつもりだ、事前にウアノスの情報を共有したし、何通りも対策を考えたそれでも強い。最強の魔眼使いである。ひょっとしたらコピーした法域で法域を上書きできないかと試みたが駄目だった、ラスボスはそんなに甘くない。



 原作では勝てたけど、今回は本当に勝てるのだろうか。

「解からないな君たちはこの状況で勝利を確信してるように見受けられるいったいどうして?」


 ウアノスが聞くと俺は思わずクスリ笑ってしまった。次の瞬間、想定していた連携が決まりウアノスのルールの穴を突いた攻撃が通る。


 最後は意外とあっさりだった。



 某月某日。一連のエル・ウルスとの戦いは巷でエル・ウルス大戦と呼ばれ始め、戦いの爪痕も家始めてきた頃、俺は異界へのゲートを開き異界を巡る事にした。


「行くのか」

「ノスか」

 行こうと足を進めると声をかけられ止められた。


「魔眼持ちの皆でベラ湖にある小島で暮らさないかって聞いたけど嫌なのか」

「とんでもない。居場所がなくても一度ムツミに故郷を見せたいそう思ってね」

 彼女の遺灰の入ったペンダントを握りしめてそう答えた。こればかりは必要になったらコピーで出すわけにはいかない。


「帰ってくるか」

「ああ、いつか。暫くいろいろな世界を巡ろうと思うからそれまで元気でいろよ。でも本当に辛くなったら……」

「待ってるさ」


 再び足を進めて、俺はゲートの中に消えていった。幾つかゲートを魔術で調整しながら潜ればつくはずだ。ゲートの向うは朝で、何でもない朝日と景色が妙に美しく感じた。

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