第10話 十四年目の因縁
今まで財団任せだったダラヤム共和国の工作に自らおもむく。ダラヤム共和国、エル・ウルス側の国家神聖諸国の一角である。既に九割がた、工作は完了しているので五部主人公エルシスの信頼を得ることがおもな活動になるだろう。
阿漕なものだ。魔眼を手に入れるために多くの犠牲を許容する。酷い目に合わせるために少女と仲良くなるなんてな。自分が嫌になる。
同時多発する三部、アカツキ帝国での事件は財団とソウトに任せよう。そのために早くからソウトに接触したしメタ情報も渡してある。
某月某日。聖明歴510年、エルシスの家の近所引っ越して、一年たった挨拶をして偶に話をする程度には仲良くなる。
エルシスの両親が兵士に連れていかれてしまい。エルシスは家に帰っていない。俺は急いでエルシスを追いかけて追いつく。
「イーサン」
途方に暮れて歩いている赤髪の少女エルシスが俺を見つけて、名前を呼んだ。
「おじさん達を助けたいかい。後戻りできない道になるがそれでいいなら案内しよう」
「何か知っているの?」
「ついてきなさい」
エルシスを連れてやってきたのは下水道の一角にあるスペース、この町にあるレジスタンスのアジトだ。
「イーサン、レジスタンスと知り合いだったの」
「ああ、ちょっとね」
その後、レジスタンスとの話があり、エルシスは両親を取り戻す為にレジスタンスに協力する事になった。
某月某日。エルシスがレジスタンスとして活動を始めて一週間がたった。ダラヤム共和国が護送している謎の石板を奪うべく襲撃してエルシスは矢に当たり死にかけ。その石板に封じ込められてした真の魔眼がエルシスに宿り、真の魔眼の力によって彼女は復活、近くにあった壊れた機械式ゴレームを直して敵を蹴散らした。
よし、これで目的は達成できた、もうダラヤム共和国はいらないな。
(こちら財団リーダー、オーダーレボリューションを発動する。オーダーレボリューションを発動する)
念話を飛ばして司令を送る。三日後、ダラヤムの首都は陥落して革命はなった。
某月某日。すっかり革命後のごたごたも落ち着いたある日、アカツキ皇国の方も解決したという連絡を受けた。エルシスの両親は戻ってきたし彼女は魔眼の能力を買われて新生ダラヤム共和国の特殊部隊に行くようだ。
「やっぱりイーサンはさスパイだったの?」
「まあ、そんなところさ」
ダラヤムを離れる折、不意にエルシスに聞かれたのでどうとでも取れる答えを返し、彼女に別れを告げた。
某月某日。原作で殺されるアヤイズミ先生を助けに行こうとしたが既に彼女に読まれていたようで船が間に合わなかったり、忘れ物をしたりとあえて分かるように運命操作系の魔術の痕跡を残して妨害され。
結局間に合わなかった。ほぼすべての魔術を修めたがいまだ魔術合戦ではあの人にかなう気がしない。
某月某日。アヤイズミ先生から杖が送られてきて喋った。
「私の中の百人の私の内一人がまだ生きようと思ったのでその思いをこの杖に込めて送ります」
「アヤイズミ先生ですか」
「ええ」
「アヤイズミ先生はウアノスをどう思っていますか」
「彼の為に死んでもいいくらいには、いえ実際に死んでしまうくらいには友情を感じていました。
よく魔術通信で話したものです」
「俺にはちょっと、理解できません」
「イーサン、盤上にある駒はどんなに僅から確率でも倒れる可能性を秘めている」
「最後ウアノスに言ったんですね」
「あら、どうして解かったの?」
原作で知っています。
某月某日。財団の活動でレイメイに寄ったら治安部隊に捕まり大臣にされてしまった。
「イーサン殿はご自身の重要性を理解しているのですか」
「ごめんよく解からない。ノックス忙しいのではないか」
「多くの国内資産を持っている大金持ちがスパイゴッコして死にましたじゃウチの信用が凄いことになる」
その後、ノックスに懇切丁寧に説明されて兎に角、俺が危ないことするのは拙いから、エル・ウルスに喧嘩売りたいなら目が届くところでやってくれた方がまだマシらしい。
某月某日。大臣として外交文書にサインをする。来るべき六部の同時多発異界発生に備えるため、その可能性を臭わせつつ、アカツキ皇国やマルセル王国、新生ダラヤムなど友好国家間の連携を密にするべく今、連合を組もうとしている。
そう言えばこれ、エル・ウルスの魔眼実験の余波で起こるんだよな。
某月某日。外交っていうのは時間がかかる。言いたい事を形式に則り伝えて、協議して調整してもう聖明歴512年だ。何とか連合は形になったし、財団だけで色々するよりも成果は大きかったが国政は俺には向かないらしい。
某月某日。聖明歴513年ついに同時多発異界発生が起きた。現代の戦車やアカツキで開発したゴレームで異界からくる軍勢や群れを蹂躙しその報告を聞くだけだ。
財団から報告が入った、六部主人公で辺境諸国の兵士コンネイが協力して貰えることに成功した。コンネイは指揮官タイプの主人公で指揮能力と情報検索の異能で困難な戦況をたびたび打破してきた。
財団で開発した兵器や、生前に火力演習へ旅行先の射撃場で見た現代兵器。財団の伝手と原作知識で集めた凄腕に、レアアイテムで強化した兵士を優先的に彼に回すつもりだ。
某月某日。聖明歴514年、同時多発異界発生も落ち着いてきた。ん、人気がない。一瞬、警戒スキルが反応するが一手遅く意識が途切れ、直ぐに意識が回復する。
まったく、レイメイの魔術技術の遅れを現役大臣として嘆くべきか、エル・ウルスの技術を褒めるべきか自分で警備結界を張れれば楽だがでもやろうとすると規則だからといってサラヤが怒るんだよな。
そこまで考えると、倒れていたのに気づき起き上がろうとするとまた意識が途切れ、直ぐに意識が回復する。 身代わりの護符があるとはいえ何度も死ぬのは気持ちのいい物ではないな。起き上がろうとするとまた意識が途切れ、直ぐに意識が回復する。
今度は転がる、よし意識が途切れない。また意識が途切れ、直ぐに意識が回復する。結局、戦闘態勢に入れるまでにまた何度も意識が途切れ回復するのを数回繰り返した。
物陰から黒いベレー帽とベスト姿の金髪の男、キリーレイが出てきた。すっかり彼もおじさんである。
「まったく、どれだけライフストックがあるんだよ百回近く殺したぞこっちは。俺の事覚えているか?
十年以上前だ忘れたよな」
「殺されそうになったのを忘れるほどお人よしじゃない。空間圧縮の魔術で身代わりの護符を一万二千枚ほど懐に忍ばせている」
同じだけの状態異常や時間停止対策の護符も持っている。
「あの時、殺しそびれたあんたが今、教皇国が一番邪魔な男で俺はそれへの鉄砲玉だよ畜生。あーあ、人よけしている間に殺しきれるだろうか」
「…………」
「では、時間がないから行かせてもらう」
キリーレイお得意の光速光線魔術が襲い掛かってくる。
キリーレイとの戦いは苦戦していた。奴め多段ヒットで一度に数十回殺してくる。計算すると俺が護符をコピーする枚数よりも彼が殺す回数の方が多い。つまり、手持ちの護符を使い切ったら死ぬ。
いつまで続くかわからない以上、残機がなくなる前に倒さないといけない。こっちもキリーの光線を大量にコピーして打つが避けるか防御されるか事前に予測され打ち消される。
「力と数頼りの単純な戦略だやり易いぞ」
「安い挑発だな」
レベルがカンストしてアイテムでドーピングもしているはずなのにモブキャラの悲しさか身のこなしでも地力でまける。どれくらい時間がたった。恐ろしく長く感じる。
一瞬の出来事、アヤイズミ先生との修行を思い出す。
「戦い方の軸ねぇ」
「ええ、ジードさんから言われたんですけどアヤイズミ先生はどうお考えですか?」
「そうだね。イーサン君の得意な戦い方は」
「魔眼の力を使って強力な技をコスト度外視で撃ちまくる事です」
「悪くないね。君の最大の強みを生かしたシンプルで強い戦い方だ。だけど、それじゃあ足りないと
思っているから剣術の鍛錬をしたり、新しい魔術を知ろうとしている」
「ええ、さっきの戦い方は上手くやられると負けそうで」
「確かに、能力を使う前にやられたり、そもそも勝てない敵だったり、巧みな戦略だったり負け筋は
幾つもある。でもそれはどれでも同じだ」
「…………」
「今大切なのはむしろ君が納得できて自信の持てる戦い方、いや心の芯の部分かな」
「心の芯?」
「肉体は両親からのもらい物、知識は外からの借り物みんなそうだよ。ならばそれを自己のモノにするのは何? 支払った対価? 得た過程? 自らが自らであるという部分それを見つけられれば、もらい物の能力に負い目を感じる必要はない」
「ありますかね俺に」
「個がある限り、芯はある。人間折れるし挫けるものそれでも折る事が出来ない部分がそれだ。まあ僕の個人的な考え方だけどね」
「ありがとうございます。少し楽になりました」
いつの日だったか彼女とそんな話をした。
いったい何回殺されたのだろうか、これならひたすら護符をコピーして持久戦をした方がよかったのかもしれない。なんで、戦う事を選んだんだろう。ああそうか、俺はこいつに勝ちたかったんだ。
戦い方を変えた。片っ端からコピーした魔術を試し、マジックアイテムやらガラクタやらを出していく。
「悪手だな」
キリーレイは余裕そうにそれらを裁いていく。
構わないとばかりにコピーを続ける。一瞬だった。無数の炎の魔術の中に一つだけ故意なのかミスなの違う種類のよく似た魔術が混ざっていて、キリーレイが打ち消すのに一瞬遅れる。
隙ができた。確信的に思う。とっさに刀を出してキリーに切りかかり、切った。切って気が付いたらキリーレイは倒れていて、死んでいた。
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