第3話 レイメイ独立戦争


 シチューを平らげて、洗浄の魔術で食器を洗う。イジュラン博士が持っていた水晶玉、魔術水晶にはいろいろな魔術が記録されていてとても役に立っている。


「イーサンは村にようがあるんだ。先生に会いに来たのか?」

「先生? ああノックスか」


 確か、ノスに勉強を教えていて、反乱中は軍師、独立後は大臣をやっていたキャラだな。

「知り合いなのか」

「いや、あった事はないな」

 お前に会いに来たんだよ。


「そうだ」

 魔術水晶を取り出してノスのステータスを見てみる。現時点でのステータスは同年代のゴブリンの子供よりも高いがそれ以上に資質が高い。流石主人公だ。現時点では魔眼は覚醒していないようだ。

「ふむ、ノスお前は強くなるぞ」

「本当か」

「ああ、ちゃんと鍛えれば間違いなく強くなる。片付けも終わったし村まで案内してくれるか」

「おう」


 その後、村に行って皆に贈り物を送って好感度を稼いだ。



 ノスに出会ってからちょくちょくゴブリンの集落にお邪魔したり他の原作キャラと顔をつないだりしていたがついにその時が来た。


 某月某日。村に住んでいる人間族の世捨て人ノックスがエル・ウルス教皇国に反乱を企てていると疑われ連れていかれてそうになり。抗議したノスが持っていた父の形見の剣を盗品ではないかと難癖をつけられて追われる身になってしまった。


 原作通りの流れである。この後ノスは反乱軍に合流してノックスを助けようとした収容所で魔眼に覚醒してエル・ウルスとの戦いを余儀なくされる。


 俺はノスが逃げたことを知ると急ぎ研究所に戻った。




 研究所にて、俺はムツミと机を挟んで向かい合っている。

「ムツミ、俺はこれから反乱に参加する事になると思う。お前だけなら何も知らないと言ってここに残れば安全なのかもしれない」


「イーサンがそうしろって言うなら私はそうするよ」

「…………」

 危うい、と感じた。何とかしようともう少ししっかりさせようとこの世界に来てから試みたが上手くいかなかった。

「ごめんムツミ一緒に行こう」

「うん」


 俺はムツミを連れて反乱に参加する事にした。





 某月某日。レイメイ某所、大渓谷の谷間に隠れるように作られている隠れ里、ここはエル・ウルスに反抗するレイメイの人々が集まっている。


「イーサンさん、すぐに頭を呼んできます」

 見張りの一人、犬耳の青年が俺に気づいた。偶に物資を融通しているのでここの連中の覚えはいい筈だ。青年が読んできたのはライオン面の豪傑風の男レオだった。彼はこの集団のリーダーをしている。


「おう、イーサンどうした」

「知り合いが捕まったから逃がす為にここに来た。何かいるものはあるか」

「助太刀がいる。草原のヌシを倒したあんたが手伝ってくれるなら心強い」

「いや、俺は後方要員」


 以前、草原で矢鱈デカい獣に襲われて倒したらヌシだった。複製の魔眼があれば攻撃が効く限りその攻撃を目いっぱいコピーすれば初見で俺が倒されるか相手の体力が無限でもない限り倒せるのだそんなに誇る事でもない。


「イーサンも来ていたのか」

 俺を囲む人だかりの奥からノスが出てきた。

「お互い考えることは同じって訳か」

「うん。俺はお使いのおり、人助けしたらここを知ったんだイーサンは」

「まあ成り行きだ」

 ネット小説で知りました。




 夜、俺たちはエル・ウルスに反抗的な人間が捕らわれている収容所まで来た。

「作戦はこうだ。陽動部隊が攻め込んでむこうを引き付け、その間に隠密部隊が中央塔を奪取して

指揮系統が壊滅した警備兵たちを一気に追い出す。異論は」

 レオに言われて答えた。

「それで構わない」

「そうか、じゃあお前はどっちがいい」

「陽動部隊で」

 隠密部隊の方にはノスがいて成功するのを知っているので俺は隠密部隊の方で被害を減らす事をしようと思う。


 本当は後方支援何かをしたいのだが仕方がない。



 収容所の正面ゲートで俺は他の反乱軍と一緒に戦っていた。

「コリンズ流スぺルテラー」

「ひいいー」

「逃げろー」


「よし、敵の士気がくじけたひと揉みしてやれ」

「おおおおお」

 妨害系の魔術を撃ちまくって敵の動きを妨げる。一応自動展開される防御障壁は張ってあるが下手に前に出てもしもがあったら怖いので適当な距離を保ち援護に徹する。


 先ほどのコリンズ流スぺルテラーは相手の正気を奪って恐怖を流し込むえげるない呪文だが犠牲を抑えるのには役に立つ。しばらくすると中央塔が制圧されて敵が逃げていった。





 ノスたちに合流するとノスは真の魔眼に覚醒してノックスは反乱軍の軍師になると言い出していた。知ってた。

「イーサン殿も助けに来てくれたのですか」


 世捨て人めいた雰囲気の黒髪を伸ばした青年がノックスだ。原作では好きなキャラだったが実際に付き合うとどうもこいつは苦手である。

「それくらいの義理はある」

「そうですか、後程お時間よろしいでしょうか」

「大切な事か絶対行かなきゃダメか」

「後悔したくないのなら来ることをお勧めします」


 そう言われたら行かざるを得ない。ノックスの策はこうだ。真の魔眼を持つノスを旗印にして、エル・ウルスへの反攻活動を拡大してレイメイを独立させる。レオは策を聞きノスにリーダーの座を譲ることを決めてノスもみんなの為ならと承諾した。



 某月某日、ノックスに言われた翌日。俺は反乱軍のアジトに用意された彼の一室まで来た。

「私の策の肝になる部分をお話ししようと思いまして」

「策の肝か」

「ええ、皆に話せば士気にかかわります。この度の戦は勝ちすぎていけません」


 悲報、軍師の言う事がよくわからない。

「あまり頭がいい方ではないんだ。解かりやすく話してくれるかい」

「ではこのレイメイ地方とエル・ウルス本国を比べてどうでしょうか」

「どうと言われてもね」

「国力、技術力、動員数全てにおいて桁違いに劣っています。正面からやりあえば勝負になりません」


「普通に考えればそうだな。でも勝つ手立てはあるんだろう軍師殿」

「ええ。エル・ウルスがこの地を維持する事を採算が合わないと思わせる。決して本気を出させないよう

にそれが此度の大戦略の格子です」


 ノッスクがそう言い切り。原作で語られなかった戦略を俺に語ってくれた。

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