第2話 ノスとの邂逅
ムツミが用意してくれた食事を食べてノートをつづる。異世界に来て早々重たい物を背負ってしまった俺は研究室にあったノートにこの世界に来た時に頭に浮かんだ文章と魔眼物語のあらすじを書いた。
来た時に浮かんだ文章。
・お前をさっき読んでた魔眼物語の世界に転生させた。
・右目に真の魔眼の一つ複製の魔眼を与える。
・複製の魔眼は触れたり見たことのある技や物をコピーできる。
・触れたり見た書物文書などは自動で頭の中に記憶することができる。
・一部の生物などは複製できない。
・前世の記憶はそのままにしておく。
・言葉が通じ、読み書きは出来るようにしておく。
・現実のお前の存在は初めから存在しない事にしておいた。
・好きに生きろ。
魔眼物語のあらすじ
強力な力を持つ真の魔眼。得た物には固有能力と不老と上位の権能が与えられる。その魔眼にに翻弄される人々を描いた物語。
一部 聖明歴501年
無口な田舎の少年アポス(13)がマルセル王国に出現した異界の主、魔王を倒す話。魔眼の異能は身体強化。
二部 聖明歴504年
騎士の少年メテル(15)がクーデターによって滅びたセルフィーナ帝国を姫様と一緒に再建する話。魔眼の異能は防御障壁。
三部 聖明歴510年
転生者である魔術学院の少年ソウト(16)がアカツキ皇国の皇都に暗躍する秘密結社の異界召喚を防ぐ話。魔眼の異能は魔力生成。
四部 聖明歴499年
ハーフゴブリンである少年ノス(12)がレイメイ地方でエル・ウルスへの反乱のリーダーになる話。魔眼の異能は体力回復。
五部 聖明歴510年
少女エルシス(14)がダラヤム共和国で収容所に入れられた家族を取り戻す為にレジスタンスに参加国家を解体する話。魔眼の異能は修理。追記、ロステクを直して戦っていた。
六部 聖明歴513年
兵士コンネイ(25)が各地で転戦しながら同時多発した異界から人々を守る話。魔眼の異能は情報。追記、情報の海にダイブして情報を持ち帰って戦っていた。
七部 聖明歴515年
諸国をめぐる交易商の主人公クナピムカ(20)が歴代主人公を集めて各地への侵攻を開始したエル・ウルスの教皇ウアヌスを倒す話。魔眼の異能は幸運。追記、作中で完全に制御できなかった。
零部 聖明歴362年~
王族の家に生まれたウアヌスが諸国が争う乱世を嘆き、一帯を統一して建国する話。魔眼の異能は法治。
ここまで書いて筆をおいた。アラも多かったが魔眼物語の事は俺は好きだったんだなと再確認する。細かい設定などはこれから書いていこう。
某月某日。研究所の庭で、異能の練習をする。拾った木の実を複製してみた。一度に大量に複製することもでき見た感じも触った感じも本物と遜色ない。
次に、ムツミに持ってきてもらったイジュラン博士の研究資料を触ってみたら読まなくても何が書いてあるか解かった。かなりマッドな研究だった。他にも文章に書いてある内容や自分で気づいたことなど一通り能力の実験をした。
ゲームでの舐めプレイ、縛りプレイなどをする気はないし、途中で使えなくなるのならそれまでにいっぱい使った方が得だと考え、複製の能力は使っていくとこにした。片隅にイジュラン博士と他多くのホムンクルス達の墓がある事に気づいて暫く手を合わせた。
某月某日。この世界に来て三日がたった。研究所の食料には余裕があるし、手に入れた力は強力だ。コピー能力は物語なんかだとカマセっぽい役回りが多いが、使い勝手のいい能力には違いない。
ここに来て考えた。俺は現実にいた頃の知識と複製の能力で魔眼物語の過程で犠牲になる人を少しでも救おうと思う。この魔眼を持っている事が知られればエル・ウルスも狙ってくるだろうだから積極的に動こう。
某月某日。最近はムツミと一緒にレイメイ一帯のバザーを巡る事が多い。病衣をやめて、シャツとローブとズボンの旅人風の外見に発動時光る魔眼を隠すための眼帯をつけるようにした。そこで通常の品物以外でも武器やマジックアイテム、異界からの流れ物なんかも見て回る。
「イーサンさん、また薄い本を手に入ったりしませんか?」
「コーカーさん、バリエーションを増やすのはちょっと厳しいですね。数なら何とかなります」
今、カエル型の亜人コーカーにと商談をしている。能力があるのでワザワザ同人誌なんて複製して売る必要はないのだが彼、四部の主人公ノスの所で反乱軍の物資を担当するのだ。
伝手を得たいのでやっている。ちなみにイーサンというのはこっちの世界での俺の名前だこの体に元の名前が違和感があったので新しくつけた。腕に111と番号が彫ってあったのでイーサンにした。
「流石ですねイーサンさん。異界からの流れ物なんて珍しい物を入手できるなんて」
「いえちょっとした伝手があるだけです」
能力のテストをしている時現代にいるときに見たり触ったりしたものでも複製できることが解かった。コーカーとの伝手を使って将来反乱軍の物資などの面で支えられればいいと考えている、元現代人なので前に立って戦う自信はない、そういう分野で手助けができればいい。そろそろムツミが退屈している頃なのでコーカーとの話もそこそこに切り上げてムツミの所に戻った。
某月某日。レイメイは熱帯雨林やサバンナ、草原などが連なり多くの部族がいる。俺は今、四部の主人公ノスがいる村に向かっている。結構な難路だがこの体は生前よりも頑丈なので程よい疲労感だ。
ムツミには辛いだろうと思い研究所に置いてきた。お土産をどうしようかと思いながらジャングルを進んでいると突然怒鳴られた。
「おい、お前のせいで獲物が逃げちゃっただろう」
「?」
ゴブリンの人間に近い外見をしたゴブリンの子供がいた。
「ああ、ごめん」
とりあえず謝ってしまうあたり俺も元日本人だなと内心思いつつ頭を下げた。
「どうしてくれるんだよ昼メシ」
「悪かったよ。何かご馳走するよ」
荷物から鍋を取り出すとその中に西の市で流行っている店の赤いシチューみたいな料理を出して見せた。
「お前マジナイ師か」
「そんなところだ。行商の真似事もしている。イーサンだ」
「俺か俺はノスってんだ」
「ああ君がか」
思ったよりも早く探していた人物に会えた。
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