イビルアイコンプ~魔眼物語の読者が複製の魔眼持ちで転生~
寒晒 てんのすけ
第1話 目覚めたら魔眼の世界
忘月某日。休日のある日に俺は一抹の寂しさと、程よい満足感に浸りながらパソコンから離れた。
「結局、設定まで読んでしまった。今回は当たりだったな」
見つけたネット小説「魔眼物語」を読み終えて少し眠い。昨日は少し夜更かししたし、今日は結構な早起きをした。いい夢が見れそうだと思いながら俺はベッドに横になり意識は薄くなっていった。
気が付くと、俺は固い石の上に寝ていた。頭の中に文章が浮かび上がってくる。
・お前をさっき読んでた魔眼物語の世界に転生させた。
・右目に真の魔眼の一つ複製の魔眼を与える。
・複製の魔眼は触れたり見たことのある技や物をコピーできる。
・触れたり見た書物文書などは自動で頭の中に記憶することができる。
・一部の生物などは複製できない。
・前世の記憶はそのままにしておく。
・言葉が通じ、読み書きは出来るようにしておく。
・現実のお前の存在は初めから存在しない事にしておいた。
・好きに生きろ。
悪い夢だと、思った。夢にしては妙にリアルで、なんだか生臭く、切り身の生のような冷たくて気持ちの悪い感覚に包まれていた。
周りを見ると死体だらけだ。銀髪で金色の目をして整った顔の男女その死体死体死体。体を動かして死体の山の中からはい出す。
「!!!」
半ばパニックになりながら声にならない声を上げて、固く冷たい死体から離れるのに苦労した。しばし、呆然として周囲を見る。石で囲まれた薄暗い部屋、全裸死体の山。頭に浮かび上がった文章を信じるならここは魔眼物語世界らしい。
理解を越えた。出来事に呆然としてどれくらい時間がたっただろう。こっちに近づいてくる足音が聞こえた。
足音の主は白衣の痩せ灰がかった肌色をした男だった。年齢が解からない。
「何故、死んだはずのホムンクルスが生き返ったのか解からないがんんんこれは」
そういって男は手に持っている水晶玉のような球に写る文字を見た。
「真の魔眼、ふふふ素晴らしい是非解剖したい」
「ちょっと待ってくれ、さっき気が付いたばかりで前後の事情が解からないんだ」
男に向かい抗議するが男は聞く様子がなかった。
「何、君は知る必要はありません。解剖される君にはね」
「解剖なんかされたら死んじゃうだろう」
「おや、そこまで理解していますか。ますます解剖したくなる」
「解剖なんてごめんだ。他に有益な方法を考えよう。例えばほら、俺は別の世界の事を知っていて……」
「時間の無駄です。わずらわしい」
「うわあああああ」
説得をしているが男は聞かず、水晶玉から電撃を出して俺にあってて来た。
「うう…………」
「さてと、大人しくなったし運ぶとしますか。アレを呼びましょう」
このままでは殺される。理解した俺は文章を信じた。先ほどの電撃をコピーして男に放つイメージをして頭の中にあるスイッチを目いっぱい押した。
「ああああああああああああああああ」
断末魔を上げて、電撃を浴びて男は倒れる。何故か複製の魔眼の使い方を理解していた。そして、今更自分が全裸だったことを薄れゆく意識の中で気づいた。
次に気が付いた時はベットの上だった。悪い夢を見たのだと思いたかったがうすら開いた目から入る見慣れない景色がそれを否定した。
「あ、気が付いた」
銀色の髪をした金色の瞳の少女がそこにいた。死体の山で見た顔だったが彼女はそれでと違い生気がある。心なしか人形のような彼女の顔が優し気に見える
「助けてくれたのか」
体を起こして、彼女に礼を言う。ちらりと自分の体を見たが、彼女が来ているのと同じ緑色の病衣めいた服が着せられていた。
「倒れているあなたを運んで、服を着せてベットに寝かせたのを助けたって言うならそう。そのままの方がよかった?」
「放置は勘弁だよ」
そこまで、言って気付く彼女が自分を助けて大丈夫なのだろうか。
「その、君はいいのかい。俺を助けたことで個々のえらい人に怒られたりなんかしない?」
「博士は死んでしまいました。あなたの横で倒れていて、私が来た時にはもう動かなかった」
恐らく、俺を解剖しようとした男が彼女の言う博士なのだろうな。殺されそうになったとはいえ本当の事を言い出せなかった。
「…………」
「あ、私どうすればいいだろう。博士が死んじゃって……そうだ、良ければあなたが決めて」
「難しい事を言わないでくれ。そうだ今は聖明歴何年で、ここは何処なんだ」
話の方向を、変えようと俺は彼女に質問をした。
俺を助けた彼女、ムツミからの話で分かった事がいくつかがある。一つは、今ここは聖明歴499年、魔眼物語でいう時系列で二番目、四部あたりの時期の四部の舞台になった場所でレイメイ地方だそうだ。厄介ごとに巻き込まれないか心配であるが一先ずそれは置いておこう。
もう一つは、俺が殺してしまった博士。彼はイジュランと言って、エル・ウルス教皇国という国の研究者でホムンクルスの研究をしていた。四部で主人公たちに倒される悪役である。少しだけ罪悪感が減ったので自分もロクな性格ではないな。死体は俺が起きた時にはすでにムツミが埋めたらしい。
さて、そのイジュラン博士は、この研究所でムツミと二人で研究をしていたらしい。ちなみにムツミという名前は俺が付けた。生前イジュラン博士はムツミを物扱いでアレとかオイとかと呼んでいたらしく、酷いと思ったので勝手につけさせてもらった。
最後に、俺自身イジュラン博士が作ったホムンクルス、人工栽培された人間のようなものでムツミと同じ銀髪に黄金の瞳をしている。
「ムツミ、イジュラン博士を殺したのは俺だ。恨んでいるかい」
「そう、私には解からない」
話も落ち着いたところで、俺はムツミに告白した。
「殺されそうになったから、殺してしまった」
葛藤はあった。このまま黙っていれば、彼女のムツミの親にあたる存在を殺してしまった事を秘めておくのに耐えられずたどたどしく言葉を紡いだ。
「何かできることがあるかい」
「じゃあ、私が何をすればいいのか教えて」
対するムツミは事がよく解かっていないようだ。
「何をすればいいのかって」
「これまでは、博士の手伝いをしたり、食事を用意したりしてきた。これからは何をすればいいのか
解からない。博士が死んじゃったのに二人分ご飯を作ればいいの?」
ふと思いついた。この思い付きは卑怯な行為だと思う。言うな。
「じゃあ、それをする事を代償にするって事でいいかな」
やめろ、こんな何も解かっていない子供を騙すような事をするな。
「うん、それでいい」
ムツミがそう頷いた。
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