第4話

 ドッッガガガガアアァァァァァンンンッッ!!!

 ……

「ゲホッゲホッ! うげっ、すっごいホコリだ。口の中が……気持ち悪い……」

 とりあえず、死んではいない。

 瓦礫が散乱しているのは、ボクが屋根を……あと、二階の床を突き破ったからだ。

「な、何なの? 敵の攻撃?」

 声が聞こえてくる。女性の声だ。それも、聞き覚えのある……これは!

「市長さん! そこにいるの、エルレイン市長ですか?」

「え? ええ、そうだけど。誰……いいえ、この声! あなた、シュン君なの?」

 ボクは声のする方向へと歩いていく。煙を避けながら進むと、そこに市長の姿が見えた。

「よかった……まだ無事だったんですね」

「あなた、どうやってここに? 上から落ちてきたみたいだったけど」

「はい、正面からはとても助けに来れそうになったもので……黒の兵団は、どこまで来てるんですか?」

 ボクはすぐに状況を確かめようとした。

「わからないわ。屋敷に侵入しているのは確かだけど……まさか、あなたが助けに来るとは思わなかったのよ。ふふふ、やっぱり似てるわね、あの人に」

「それって、市長の初恋の人ですか? どうして、今そんなこと……」

 ザッザッザッザッ!

 足音が聞こえる。鎧を身につけた連中の、重々しい足音だ。こちらに近づいてきている。

 ボクはすぐに周りを見渡した。どうやら、ここはヴァスと一緒に訪れた会議室のようだ。部屋はかなり広いが、遮るものは何にもない。隠れる場所も見当たらない。

「逃げ道はないんですか? 隠し通路とか」

「ないわね。この屋敷よりも安全な場所なんてないわ。少なくとも、わたしにとってはね」

 と、なれば……ここで黒の兵団とご対面するしかないわけだ。

「なら、先手必勝ですね」

 ボクは市長に下がるように言い、部屋の扉へと目を向ける。

 ザッザッザッ!

 ザザッザザッザザッッ!

 どんどん足音が近づく。

 ザザッザザッザザッッ……。

 部屋の扉の前で、音が止まった。

 ……

 …

 ドッカンッ!!

「コモンスキル発動! コールド・クリープ!!」

 扉が勢いよく開くと同時に、ボクは床に両手を叩きつける。

 すると、ボクの手から、扉に向かって冷気が走っていった。

 ピキッビキピキッッ!!

 部屋に入ってきた八人ほどの敵兵の脚が氷で覆われる。

「う、うおおお!! な、なんだ、これ! ちょ、ちょっとまて!! 押すんじゃない……うわああああ」

 部屋に入ってすぐ、足止めを喰らったことで、後ろから入ろうとしていた連中がつっかえる。だが、人間は急に止まれない。先頭にいた八人が邪魔になり、一気に全員が転んでしまう。

「ゴミはまとめて片づけましょう! コモンスキル発動、ショック・パルス!」

 今度はボクの手のひらから、丸い電気の塊が放たれる。ふわふわと浮きながら、 転んで山を作っていた連中に近づく。

 そのうちの一人に触れた途端、それは大きく弾けた。

「あばばばばばばば!!!」

「しびっしびしびしびびびばぁ!!」

 全員、よくわからない悲鳴を上げて、そのまま気を失ってしまう。

「よし! 第一波、撃退!! ……っと、それと、だ」

 ボクはすぐさま、倒れている連中に近寄っていく。新しい足音は聞こえないから、時間はあるだろう。

「何をしているの?」

「ちょっと……いただきたいものがありまして」

 ボクは倒れている連中の一人から、ソレを外すと、自分の腰につけてみた。

 うーん、何かしっくりこないな。

「シュン君、あなた……剣が使えるの?」

「いいえ、全然。ただ、これがないと困るかな、と」


 その後も、兵団の連中は何度も部屋に侵入を試みるが、出鼻を挫く戦い方でどうにか凌ぐ。

「よ~っし!! これで! 第十……え~と、なん波だっけ?」

「おいおい! こいつはどうなってんだ?」

 この声は、ルードヴィッヒのものだ!

 ボクはすぐさま扉のほうに目を向けた。だが、そこにあるのは、ボクが倒した連中の姿だけだ。アイツはいない。

「どこだ? どこにいる?」

「どうしてクソガキがここにいやがんだ? あぁ?」

 もう一度声がして、ボクはすぐさま、視線を上げた。

 ボクが空けた天井の穴。そこからのぞき込む人影がある。それはすぐに穴から飛び降りてきて、ボクの前に着地した。

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