第11話

 市長達との会談から三日が経過した。ドラゴンの被害からは一週間経ち、街はようやく日常を取り戻しつつある。

 だが、ノールーツの中は、むしろてんやわんやの大騒ぎだ。なにせ、ドラゴン退治の用意が進められていたからだ。

 結局、カーマインの中でこの仕事に参加するのは、ヴァスとティーネ、そしてボク……とミリアである。

「ミリアさん……あんたには、ここに残ってほしいんだ。俺もさすがに、ドラゴンから守り切れるとは約束できねぇ」

「心配は~ご無用ですよぉ。自分の身は~自分で守れますからぁ。それよりも~、ワタシには~シュン様に従うっていうぅ、使命があるんですぅ」

 ミリアの返答にヴァスはがっくりとうなだれる。ミリアはこちらにニッコリと笑顔を向けた。

「いや、間に合ってるんで、そういうの」

「な~んでですかぁ! 本当に~つれないですねぇ、シュン様は~」

 ミリアは頬っぺたを膨らませる。

 カワイイ……じゃなくて、そんな風にしても無駄だから。正直、信用できないよ。

「いいじゃないか、行きたいっていうなら。ウチでは、仕事の受注は個人の裁量だろう? 強制的に働かせることも、逆に仕事から排除もしない……ミリアだってカーマインの一員なんだから、ルールは絶対さ! そうじゃないのかい、ヴァス?」

 ティーネは自分の身支度を進めつつ、ミリアを睨みつけた。

 どうやら、まだミリアに敵対心を燃やしているらしい。まあ、あからさまに絡むことはなくなったけど。

「山の麓までは市長が馬車を出してくれるらしい。そこからは歩いて登るしかないからな! しっかりと準備していきなよ、シュン」

 ティーネはボクにリュックを差し出した。どういうわけか、ボクには優しいんだよな。「う~ん、山登りかぁ。苦手なんだけどな。どのくらいあるのかな、高さは」

「さぁね。正確にはわからないけど、千五百ベールはあるって話だよ」

 ベールはこの世界〈エクスフィア〉における長さの単位だ。一ベールがボクの身長の約半分。だから八十五センチくらい。だから、千五百ベールは……千三百メートルくらいだろうか。高いなぁ……。

「ミリアさんには、山道は厳しすぎるんだよ。やっぱりここで待ってたほうが……」

「大丈夫ですぅ。ワタシ~、こう見えても足腰強いんですよぉ」

 まだ言ってるよ、ヴァス。

 ていうか、どうしてヴァスはミリアに惚れてるんだろ。確かにミリアは美人――それも飛び切りの――だとは思うけど、それはあくまで『人間』の基準だ。

 人狼であるヴァスが、人間であるミリアに惚れる理由がよくわからない。人狼なら、同じく人狼を好きになるものじゃないのか?

 そんなことを考えているうちに、他の三人の支度も整った。いざ、ドラゴン退治に出発!

 ……はぁ、面倒くさい。

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