第26話 天罰と希望
家に帰ってくると、たった一日のはずなのに随分長いこと部屋に来ていなかったかのように懐かしく感じられた。
母もその姿に違和感を覚えながらも何も言わないようだ。
『私・・・・死ぬのかな。』
『体・・・そんなに痛くないのに。健康そうなのに。なんでこれで病気なんだろう?』
一人になるとまた涙が溢れた。それを拭くこともなくただ天井と睨み合いながら涙を流す。
『怖い‥‥。死にたくない・・・・。』
『なんでババアはあんなに平然としていられるんだ。病気だってわかってたら死ぬのは誰だって怖いはずだろ。』
入れ替わる前、
『なんで・・・・?』
いつ死んでもおかしくない体とこの暗い小さな部屋で
長い長い時間、
こんなに長いこと【死】というものについて考えたことがあっただろうか。
自分とは無関係と思っていたものが近くに感じることは、これほどまでに怖いことだったのか。
誰か来たようだ。
母の話声の後すぐに廊下を歩く音が聞こえ
「おばあちゃん、お客さん。えっと・・・
「いいよ、入れてあげて。」
暗い気持ちの
「
まさか泣きだすとは・・・・これは
「延命治療にするって聞きました。そりゃ
いつも通りひたすら一人でしゃべる
ただいつもと違ってその目には涙。鼻には鼻水が大量にあふれていて、それを手で拭っていて汚い。
それでも大男がここまで大泣きするのを見ると
「誰にも迷惑かけずに死にたいから。」
そう言ったことに一番驚いたのは
「私はいつ死んでもいい。年寄りだし。」
一言、かっこつけた言葉を言うと次から次に出てくる。
「今までありがとう。
もはや演技なのか
『死ぬ前って誰かにこんなに感謝したくなるものなのか。』
まるで
半分怖くてたまらない。しかしもう半分は覚悟を決めたかのような気持ちだった。
「そ、そんな事言わないでください・・・よ。
「理学療法士?あのリハビリとか手伝ったりするやつ?」
「そうっすよ!人の為にできることをやったら自分も救われるって
正座をして
力強そうな腕が涙と鼻水でぐしゃぐしゃになっていく。
「
その真剣さが伝わってくると
『うざい!死ね!』
自分は何度、
言葉だけではなく、本当に死んでしまえと思っていたのも確かだ。
締め付ける胸の痛みが後悔となって押し寄せてくる。
長居をしては悪いと
また一人部屋に残された
「天罰か・・・・。」
冷静に考えることができて初めて
それを認めることにためらっていたが、もう誤魔化すことにすら疲れた。
「私がババアにしてきたこと・・・・。それが悪かったんだな。これは私への罰か。もうわかったよ、神様。もう、これ以上何もいらないからさ。好きにしてくれよ。」
うつむいてボソリボソリと独り言をつぶやいた後、いきなりスマホが鳴り出したので流石に
知らない電話番号だった。
「だ・・・・だれ???」
怖かったので出ないでいると、すぐに切れた。
が、また10分ほどしてかかってきた。
その後は30分後ほどしてかかってきた。
さすがに、間違い電話ではなさそうだと思い5回目には出ることにした。
「も、もしもし??」
「わあ!出た!」
『出たってなんだよ!?自分からかけてきてるくせに』
「あ、あの~だれですか?」
「あ、ごめん。
「う、うん。なんで私の名前知ってんの?っていうか誰?」
「俺だよ。
その一言に
病気のことなどもあって
「かっ・・・・!
「え?この前、
「マジかよ!あのクソババア!」
「え!?」
つい口に出してしまったが、
「あ、違う!なんでもない。それで?な、なんか用?」
右手で髪の毛を何度もときながら、そわそわして
「あの、
「あ、ああ。大丈夫だよ。平気、平気。」
「お見舞いに行ってもいいかなって思って。」
是非来て!!!!
「ふ、ふ~ん。ま、まあ・・・いいんじゃない?勝手にすれば?」
「よかった、ありがとう。明後日お邪魔してもいいかな?」
「ま、まあ・・・別に用事もないし?いいんじゃない?」
時間の確認をしてから
ツーツー
そしてそれを見て微笑んでいる自分にやっと気づいたのだ。
「な、なにニヤニヤしてるの、私!気持ち悪っ!」
自分にツッコミを入れつつも嬉しい気持ちは隠せない。
自分が
ほんの一瞬だったが、
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