第21話 挨拶運動
ゲートボール大会以来、
「公園のゴミ掃除をしろ!」
「朝の見回り運動をしろ!」
「昼ご飯くらい自分で作れ!」
「はいはい、行くよ。」
軽く返事をして、やらなければいい。
だが、何もしないで一日中部屋にこもっているのは、やはり気持ちのいいものではない。
体は重いし外は寒い。おまけに年寄りの体ではお洒落などという発想はない。
そんな状況で外に出て何が面白いというのだろうか。
高校生の時のように、あれもこれもやりたいという思いがなくなっていた。
『ああ、私このまま死んでいくのかな。ババアの姿になったせいだ。』
もう何度そう思っただろうか。
ゲートボール大会で見た人々のあのやる気のある姿を思い出すと余計に惨めに感じる。確かにあそこには年齢など関係なく誰もが楽しそうだった。
しかし何を見ていいかわからない。
仕方なく動画サイトを開くと広告がたちあがり、それがすぐ目に入った。
【恐竜博物館!日本最大規模の展示!】
恐竜という広告を目にして
しかし、盛り上がった気分をできれば修正したかった。
なぜなら恐竜を考えた時にオタクボーイの
気分が上がったのもそのせいだが、認めたくなかった。
話がしたい。
「いやいや、ないっしょ。オタクボーイと話なんかしてもさ、ババアの姿から解放されるわけじゃあるまいし。だいたい、どうやって会うよ?電話番号とかも知らないし?」
そんな事を言いながらも、どうやったら会えるのかを考えてしまう。
「学校行けば会えるけど、今ババアの姿だから行けるわけないしさ。」
「あ、でも
久しぶりに
いつもスマホを見てるので、
「おはよ~
「おはよ、
「え~知るわけないじゃん。友達でもないんだからぁ。ってかさ、なんでそんなこと聞くのぉ?もしかしてオタクボーイの事気になりだしちゃった感じ?」
「ち、ちがうし!!なんかさ、そいつとうちのババアが知り合いみたいだからさ、それが何でなのか気になっただけで・・・・。」
「へぇ~言い訳に聞こえるんですけどぉ?」
電話の向こうで
「そんなに気になるならさ、今そこ歩いてるから聞いてあげようか?
「え!!や、やめてよ!!」
「いいじゃん、いいじゃん!オタクボーイも
「や、やめてぇ!!!!!」
「ははは!なーんてね。オタクボーイいるのは嘘でした~焦っちゃって可愛いね、
「ちょっとお!マジでもうふざけるのやめてよね!」
ひたすら笑った後に
「ねぇ、どうかしたの?
「ちょいまって。向こうに
言い訳ができないので、すぐに電話を切った。
「や、やばかった!心霊現象か何かかと思われそうじゃん!まあ、入れ替わること自体そんな感じだけど。」
かけ直してくるのではないかと焦ったが、電話が鳴ることはなかったので胸をなでおろした。
次の日、
「昨日、見守りの挨拶運動しなかったじゃろ!?近所の人に聞いたらすぐわかるけぇね!」
「ええ!私の体で勝手に知らない近所のやつなんかと話するなよ!!」
「そんなことはどうでもええ!!今日は絶対行きぃや!」
「そんなもん、私が行くわけ・・・・・。」
行くわけない!!と言おうと思ったが、
挨拶運動や見守り隊など、どうでもいいのだが、もしかしたらそれをしてるうちに
前も朝歩いている時に出会ったのだ。
それだ!!
ただ今の
「あ、あぁ~やっぱ行ってみよっかな。まあ、ちょっと気分転換にもなるしね。」
「そうか。それならいい。」
『普通、何度も裏切られたら諦めもつくだろうに。』
と言っても今の自分に似合うのは、どれが流行なのかもわからない暗めの服だけだ。
その中でも、違和感のない服を選んでみた。
鏡の前に立ってみたが、「ださっ!」としか言いようがない。
『メイクをしてみようか。』
鏡に映るのは皺とシミだらけで、脱毛もしないでちょびヒゲが生えている顔。
しかし、
何もしていない時よりも、違和感もなくずっとキレイになった。
「へへ!いいじゃん!ほらみろ!こうやってね、女はメイクをすると光るんだよ。」
毛嫌いしていた
メイク道具を片づけたら、また
でも今日の
何人もの小学生が
その中には、何も言わず通り過ぎる子。友達の話に夢中になって気づきもしない子。オタクボーイの
いろんな子がいたが、
『本当にこの場所で合ってるのかな?なんか、お地蔵さんみたいな気分なんだけど?』
キョロキョロまわりを見渡しながら立っていると突然、元気な声が聞こえた!
「おはようございます!!!」
「おはよう!!」
「おっはよう!!」
数人の子供の声に気付いた
「わわっ!お、おはよう!!」
個性あふれる3人の男の子たちがランドセルを右左に揺らしながら走り、通りすぎる時に大きな声で挨拶をしてきたのだ。
1人目が通り過ぎ、2人目が通りすぎ、3人目が
「待ってよ~」
と言いながら、よっこらよっこら通りすぎて行った。
どっかで見た光景のような・・・・。
よくよく見てみるとその3人は、数週間前まだ自分が高校生だった時に、階段で騒いでたガキどもだ!
『あのクソガキじゃん!くそぉ!また騒ぎやがって!道路走ったら車とか来てあぶないだろうが!』
一人で苛立っていると、それを打ち消すように、3人がした大きな声の挨拶の光景が頭の中で流れた。
「ま、まあ・・・。元気なのはいいことじゃねぇか。」
銅像のように立っているだけの自分に挨拶をしてもらえるというのは、やはり気持ちがいい。
その後、
残念ながらオタクボーイの
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