第18話 年寄りの遊び?
「げっ・・・・・」
「ゲートボールなんか誰が行くか!年寄りの遊びだろうが!」
「年寄りの遊びじゃけぇ、今のお前にピッタリじゃろ。」
「嫌だ!嫌だ!そんなの絶対行かないから!!」
偉ぶった態度で両腕を組んで
「ずっと前からの仲間との約束じゃけぇ、5人いないと出場できのやけぇ。お前が行かなかったら、みんなが悲しむ。」
「そんなん知るか!大いに悲しめよ!」
「いいから、今日の練習から行ってみろ!今から用意してやるけぇ。」
そう言うと
「ほら、近くの公園で9時からやってるけぇ。」
「いらねぇよ!ってか何このハンマー!?もう私をこれ以上年寄りにしないでよね!!」
「いいから行け!いつまでも家でめそめそしちょるくらいならゲートボールくらいできるようになってみろ!何もしないで引きこもっちょるより何十倍もマシやけぇ!」
「私はこれでいいんだよ!いちいちうるさい!そんなもの行ったって何も得しねぇんだから!」
しばらくスティックとボールの渡し合いが続いた後、時間がないことに焦った
「お前が今日の練習に行かんのやったら生徒会に立候補するけぇね。」
「はあああああああ!?」
頼むからやめてください!!!!!!
「生徒会に立候補して、先生たちに愛想ふりまくけぇね。それでもええんか?」
「なっ・・・。そんな優等生っぽいことするな!」
「私は本気じゃけぇ。どうする?」
「ってか、どんな脅しだよ!それぇ!!」
「どうだ?行くのか?」
「くぅううう!わかったよ!行くよ!行けばいいんだろ!そのかわりそのスカートはもっと短くしろ!これで商談成立だろ!」
「わかった。行かなかったら連絡くるけぇ、すぐバレるけぇね。」
駆け引きを終えると
一人玄関に残された
「くっそおぉおお!」
「いぎだぐなぃいい」
あまりの寒さに腰を曲げて歩いたので、周りから見れば元気なおばあさんという風にはもはや見えないであろう。
公園への道のりはまあまあ短い。だが、それでも2、3人ほどすれ違う通行人の姿があった。
みんなこぞって
「
「おう、京ちゃん!腰かがめていつもの京ちゃんらしくないねぇ。背筋伸ばして歩きぃや!うはは!」
近所の奥さんや知らないじいさん。
いつもなら何とも思わないような軽い挨拶だ。いや、もしかしたらその挨拶にすらムカついていたかもしれない。
だが、ずっと引きこもっていた
何と返していいかわからなかったが、とりあえず一礼するだけで精一杯だった。
『何か他に言えばよかったかな。でも私にとったら知らない人だしな。』
何もできない自分に罪悪感を引きずらせながら、
「はあ、着いちゃった。ってか、ここゲートボールとかできんの?何もないじゃん。」
公園にいたのは道具を持った10人ほどのお年寄りと、数人の通行人だけ。
お年寄りたちは、固まって話をしている。
その静まり返った風景に
『やっぱ、やめとこうかな。全然知らないやつばっかだし!わかってたけどジジババばっかじゃん!もう生徒会してた方が楽かも・・・・。』
公園の入り口にじっと立ち止まっていると年寄りの一人が大声をあげた。
「あらあ!
にっこりと皺を作って話す笑顔の優しいおばあさんだった。
「あ、えっと・・・。」
「はよ、こっち来ぃや。もう始めるよ。」
「あ、はい・・・。」
恐る恐る近づく
変な緊張感と恐怖で体が震えた。
もうこうなると
「
『このジジイの名前は
まるでホッチキスの芯を大きくしたような物を地面に差し込んだ。全部で三か所。
『あれが、ゴールか?なんで三個もあるんだ?』
『なにあれ?何かの目印??』
みんながスティックを取り出したので
「
『紅?え?紅組と白組があるってこと??』
言われるままにやっていくと、とりあえず準備は完了したようだ。
軽く整列すると
「え~まず!おはようございます!」
「おはようございます!!!」
『さっき挨拶してたじゃん』
心の中で
「え~それではですね。練習を始めたいと思います。今度開かれるゲートボール大会では優勝者には商品券3万円が贈られるということで、大きな大会になっておりますので頑張りましょう!はい。以上!!」
「さ!三万円!!めっちゃいいじゃん!」
思わず声が出た。
「
さっきのおばあさんが笑いながら
明らかに入れ歯であろう歯を惜しげもなく見せながら、にっこり笑っている。
『三万!欲しいし!ゲートボールとか年寄りの遊びでしょ!?これって、私がいれば超有利なんじゃね?私みたいに若い脳みそ持ったやつがやれば年寄りのゲームなんかすぐ勝てるじゃん!』
「じゃあ
おばあさんは玉を地面に置いた。
『やべ!ルールまったくわかんないんだけど?』
置かれたボールの先に先ほど
『そうか、あのゴールに玉入れりゃいいんだろ!楽勝!!!』
が!スティックはボールに当たるどころか地面にぶつかりその衝撃で地面に穴が開き
「いったあああ!!」
まわりの年寄りが唖然としている様子がきつく閉じたまぶたの奥に見えるようだった。
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