第17話 一人の時間
相変わらず、元に戻る様子のない
色んなことがあったせいで入れ替わったショックを忘れていたが、静まり返った部屋で一人ご飯をもくもくと食べているとやはり憂うつな気分になるものだ。
「ああ、もう!いったいどうやったら元に戻るの!?私、このまま学校も行かずに一生この暗い部屋で過ごすの!?」
普段サボっていた学校すらもこんな状態では何故か恋しくなるものだ。
「ババアは、いいよな!若い体手に入れて、人生やり直しできるしさ!私なんかまだ高校生だったのに!青春時代どんどん失っていくじゃん!」
そこまで言い切った時と同時に一人静かな食事が終わった。
いつも
台所へ行こうと廊下へ出ると
『え?あの2人が話してるの?よく話できるな。何の話してんだろう?』
こっそり聞き耳をたてると母の大笑いが聞こえた。
「あははは。もう、ほんとお隣さん面白いでしょう?広告の安売り玉ねぎ欲しいばっかりにタクシーに乗ってね、買い物した後なんか一番欲しいと思ってた玉ねぎ買うの忘れてたって言うのよ。笑っちゃう!」
母の笑い話に
「ふふ。タクシー代の方が高くついたね。」
「でしょ!?
「お隣さんに福神漬ないか聞けばよかったのに。」
「え?ああ、そうね。たぶん持ってないでしょうけど。ふふ。」
「昔はそうやって人の力を借りて生きていたのにね。」
「なあに、あなた。やけに年寄りみたいなこと言うのね。」
話の流れでやばい!と思った
『なんだよ。あんなに笑ってたくせに私が来た途端に黙るなんて。なんか、のけ者にでもされてる気分だ。』
そう思った
「最近、おばあちゃん食事も作らないし食器も洗わないし大丈夫かしら。もうだいぶ体も弱ってるみたいだから
この体のどこが弱ってるんだ。と
そういえばもう何週間も誰かと一緒に食事をしていないし、大笑いもしていない。
スマホで動画を見るのに飽きたのも初めてだ。
寝転んで時計の針を眺めては秒針が5回動くのを数えるしかなかった。
「1、2、3、4、5・・・・」
「1、2、3、4、5・・・・」
「はあ・・・。こんな体じゃなかったら人生楽しかったのに。」
昔を思い出すなんて、いよいよ年寄り臭くなってきたなと思ったが、どうせやることもない。
「よく
「
変なモヤモヤが押し寄せてくる一方で違う事が頭をよぎった。できればそれは考えたくないことだったのだが、なぜか考えてしまう。
オタクボーイの
「なんでオタクボーイなんか思い出してんだろう、私。」
よろよろの自分を小さな体で助けてくれたあの時の
「あいつだったら、私とも話してくれるよな。
一人の寂しさに嫌気がさした
この数週間、
「ちょっとおぉ!だからなんでそんなにスカート伸ばしてんの!それじゃ昭和でしょ!今、何時代だと思ってるの!!?」
「これが、決まりじゃけぇ。それに従わなきゃいけん。」
「私がそんな格好して行ったら、まわりが驚くでしょ!!」
「確かに驚いてたな。まず、机が綺麗になった事に驚いていた。ゴミ屋敷だったから全部捨ててやったけぇ。」
「え!?何を捨てたんだよ!?ま、まあ・・・机の中なんか覚えてないからいいけどさ。」
「じゃあ、行ってくる。」
「わああああ!待てって!せめてメイクしろよ!そのままだと目とか、ヤバイから!」
「そのままで美人じゃけぇ大丈夫じゃ。」
え?ほめた?
いつも喧嘩ばかりしているが、褒められるとさすがに喜んでしまう。
それ以上何も言えなくなった
靴を履き終わると
「な、なんだよ?忘れ物か?」
「そうだった。お前に頼みがある。」
「た、頼み?」
「どうせ暇じゃろ?」
「く!暇なのはババアがババアのせいだろうが!若かったらする事はいっぱいあるんだよ!」
「じゃあ、ババアでもできる事やけぇ行けるな。」
「は?行けるって?どこに?」
「私の代わりにゲートボールに行ってくれ。約束は明日じゃけぇ。」
はっ?
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