第9話 桃夏の夢
電話越しに聞こえる
小さい時からずっと一緒だった
「い、いつ?どこに引っ越すの?」
「う~んとね、あと一週間くらいかな。それより短いかもしれない。準備ができたらすぐにでも。」
「な、なんでそんな急に!どこに引っ越すの!?」
「東京だよ。」
「東京!?どうして!?お父さんの転職?」
「ううん、実は私ね・・・・。」
どうにも言いにくそうなしゃべり方をする
「早く言いなよ!なんでもっと先に言ってくれなかったの!?そんなに遠くに行ったらもう遊べなくなるじゃん!!」
「うん。
「やりたい事って何!?地元でできることだっていっぱんあるじゃん!」
「・・・・・。」
「
「約束?」
「うん。一緒に服のデザイナーになろうって言ったよね。」
小学校高学年くらいだろうか。【将来の夢】という作文を書く時に
その時に約束したのだ。
『将来一緒に服のデザイナーになろうね。』と。
そんな小さな時の事など忘れていたし、冗談だと思っていた。
「言った・・・。私、確かにそう言ったね。でもあれって小学校の時の事じゃん!
「そんなことないよ。私はずっとなりたいと思ってた。
「お人形?あ、もしかして私が作った下手くそなおばけみたいなやつ?」
そう言うと
「ふふふ。そうそう、そのお人形。とっても下手くそだったし怖かった。あのお人形。」
確かにその人形は目の位置はずれていて、顔の形と体も不釣り合いな人形だったが、そこまで言われると
一応、小学生なりに一生懸命に作ったのだ。
「
「そうだったっけ?」
「・・・・。忘れちゃったんだね。」
「・・・・。そんな事もうどうでもいいじゃん!それと東京に引っ越すのと何の関係があるの!?」
「東京だったらもっとデザイナーの事勉強できるの。それ専門の学校もあるし、有名なデザイナーさんたちと接触する機会も増えるでしょ。だから私、お父さんとお母さんにお願いしたの。無理なお願いだと思ってたけど、お父さんの仕事も運良く東京へ転勤できることになったから。」
「だから・・・。デザイナーになりたいから、地元離れて東京行くって言うの?」
「うん。とっても寂しいけどこの夢だけは諦めたくないの。」
長い沈黙が続いた。
なぜなら
もちろん、
でも一番の親友だと思っていたのに、あと一週間で行ってしまうなんて!
「へぇ。良かったじゃん。」
「どこにでも行けば?別にあんたに会えなくても困らないしね。」
「
「なんであんたが泣きそうになるわけ!?自分で決めたんでしょ!だったら勝手に行けばいいじゃん!どうせ私は一週間前に教えるくらいに適当な友達だったんだからさ!」
「
「言っとくけどね!デザイナーとかなったところで、売れるわけないんだから!そんな人、世の中のほんの一握りだよ!!世界の厳しさを知って、諦めて帰ってくるのがオチなんだから!」
しまった・・・
思ってもいないことを言ってしまった。
「そんなこと・・・・私だってわかって・・・る。」
ただムカついただけ。それだけなのに
「ごめんなさい・・・。私・・・もう・・・切るね。」
そう言うと
電話を切って部屋が静まりかえると
これが、親友が夢へと向かう時に言ってやる一言か?
ただ話してくれなかっただけで、ここまで責めるような事だったか?
やっと彼氏にフラれた事を忘れたというのに、またしても振り出しに戻ってしまった。それもこれも、
簡易ベッドの布団にもぐり込み枕が濡れるほど泣いて
「行ってきます。」
もうすでに登校の時間だ。
「やばい!ババアに言わなきゃ!」
大声で言おうとしても声がうまく出ない。
「ば・・・げほっ。げほっ。ババア!おーい!ババア!」
よろよろと襖まで行くと
「どうしたん?どうせあんたは学校行かんのやけぇ、ゆっくり寝てたらええわ。」
「ババア!今日は
「
「そう!あの子!何言われても無視しろ!」
「私は、てっきり彼氏の事言うと思うちょったけど、友達の方かい?もしかして喧嘩したか?」
「うるせぇ!ババア!別にあんなの彼氏じゃねぇし!」
その一言に
「とにかく
「どうした?
「え!!?ババア・・・・なんで知って・・・・。」
「そりゃ
「
「
「そんな・・・。」
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