野戦の共

 日が地平へと掛かる頃、重い陣笠をようやく下ろした。

 水と共に場所へ戻れば、仲間と竈が熾し始めた火と共に鍋の到着を待っていた。


 芋茎縄をちぎって入れて、干飯をざらりと入れて。

 混ぜつつ眺める向こうの山にも、ちらりほらりと夕餉の煙。

「今日はウチのな」

「おまんの味噌は塩辛しょっからいわ」

 槍を置いた仲間たちの、明るい声が響き渡る。

 戦場を渡る風のその匂いになど気付かぬように。

 努めて振る舞う明るい声に──風切る矢。


 鍋を返す。火が消える。竈の脇にしゃがみ込む。

「行くぞ」

「ま、ちっ」

 火傷しそうな縁を掴み、味噌の匂いを振りまいて。

 槍を掴んで影へと沈む仲間たちの背中を追う。

「あっちの殿様はとんでもねぇな」

「食い物の恨み覚えてろ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る