命の味
「確かめてみるか」
蓬髪が荷馬車を見上げ、僕は一も二もなく頷いた。
まぶしさに目を細めた。遠く地平に輝く樹影は初めて見る故郷の外景。
ふとした風の青さに首を回す。緑の色が視界の果てまで続いている。遥か彼方を何かの群が駆けていく。
「飯にしよう!」
血生臭さとすっぱさと、土塊のような見た目の何か。焚火のそばで鮮やかにナイフがきらめいて。
出された皿をしばし見つめ。ままよとスプーンを差し入れた。
甘くはなかった。
「良く噛めよ、坊主」
硬くて苦くてしょっぱくて。何度も何度も手を止めた。
癖があった。顔をそむけた。それでもやっぱり、食べ続けた。
知らない味。知りたいと願った味。
命の。
「うまいだろ」
涙が出た。ただ、頷いた。
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