<村>のごちそう

 祭り囃子が戻ってくる。屋台の準備は調った。

 普段は聞けない子供達の賑やかな声が響いてくる。

「美味しく、なったかな」

 流れる汗を拭いつつ本堂脇でスポーツ飲料を流し込み。

「なった?」

 かけられた声に、咽せ込んだ。


 女だった。少しばかり細面の。

 髪を揺らして境内を見る。新しい祭の始まりを、人々が集うその様を。

 小さな村の誰でもない。でも。

「村が生まれて死ぬものなら、何を食べて生きるのかなって」

 それは遠い昔の僕のおもいで。

「……怒って、泣いて、楽しんで」

 彼女が呟く。僕は続ける。

「汗して、はしゃいで、ほんの少し寂しくて」

 彼女がゆっくり振り返る。

「うん。とても美味しい」


 綺麗になりましたね。言う代わりに僕は、微笑んだ。

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