母になる
戯れの時は過ぎ、成人の儀を過ぎて。
ついにその時がやってきた。
女たちは我先にと木陰の住処を飛び出した。
照りつける陽射しは容赦なく、熱波の洗礼を浴びせかけ。
弱きものは力尽き、あっという間に地に伏した。
それは甘いと言われていた。
それは命の水とされていた。
至上の甘露と謳われた。
甘くとろける匂いに出会い。これと本能が告げるまま。ようやく辿り着いた先。
匂い発するその場所に音も立てずに留まった。
息を吸う。息を吐く。狙い定める。突き立てる。
ぷつりの音すら聞くことなく。鋭利な管は奥へ、奥へと。
吸い込む濃液は芳醇な。
滋味と強壮をもたらす旨味。
あぁこれで。
私はついに、母になる──。
ぷち。
*
「母ちゃん、キンカン!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます