母になる

戯れの時は過ぎ、成人の儀を過ぎて。

ついにその時がやってきた。


女たちは我先にと木陰の住処を飛び出した。

照りつける陽射しは容赦なく、熱波の洗礼を浴びせかけ。

弱きものは力尽き、あっという間に地に伏した。


それは甘いと言われていた。

それは命の水とされていた。

至上の甘露と謳われた。


甘くとろける匂いに出会い。これと本能が告げるまま。ようやく辿り着いた先。

匂い発するその場所に音も立てずに留まった。


息を吸う。息を吐く。狙い定める。突き立てる。

ぷつりの音すら聞くことなく。鋭利な管は奥へ、奥へと。


吸い込む濃液は芳醇な。

滋味と強壮をもたらす旨味。


あぁこれで。

私はついに、母になる──。


ぷち。


 *


「母ちゃん、キンカン!」

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