ロボットの味覚

 美味しいも不味いも、味覚という機能を僕は搭載していない。

「センサーはあったわね?」

 答えはYES。焦げ付き防止に純度を測るためのものだったけど。

 ご主人はオイルへ液滴を落としていく。混ぜて漉し取り熱して冷やして。……操作の度にRGBは数値を増す。

「苦いは毒。酸いは傷み。甘いは熱。美味しいモノは必要なモノ」

 琥珀の液体をゆるりと揺らす。とぷりと低い音がした。

「ヒトはね。必要なモノを美味しいと感じるのよ」

 僕の背面が開かれて、センサーがオイルを感じ始める。最高の燃費を予想させる、その、純度の高さを。

「ね。美味しいでしょう?」

 ご主人がにこりと笑んだ。


 センサーが記録したこの数値を、僕は『美味しい』と定義した。

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