Sランク冒険者⑳

 考えれば考えるほどレオンの表情は曇る。クライツェルのパーティーには、SランクとAランクの冒険者がそれぞれ二人いる。それでパーティーランクがSランクだ。それを踏まえるなら、サラマンダーの評価はSランクの冒険者二人分に匹敵する。もしかしたら、それ以上も有り得るかもしれない。

 サラマンダーの評価を確認する意味でも、レオンは二人の会話に割って入った。


「クライツェル、ミハイル、話の邪魔をしてすまない。どうしても教えてもらいたいことがあるのだが――構わないか?」

「俺と同じSランクのパーティーになるんだろ?遠慮することはない。俺に答えられることなら何でも教えてやるよ」

「レオンさん、改まってどうしたんですか?」

「大したことではないのだがな。先程の二人の会話を聞く限り、個人ではSランクに上がるのは難しいのだろ?では、やはりパーティーランクもSランクに上がるのは難しいのか?」

「王国にはSランクのパーティーが二組みしかいないんだぞ?考えれば直ぐに分かることだろ?Sランクに認定されるのは至難の業だよ」

「クライツェルさんの言う通りです。例えパーティーの人数を大幅に増やして戦力を増強しても、簡単にSランクのパーティーとは認められません。過去にはBランク以下の冒険者が、数十人でパーティーを組んでSランクになった事例もあります。ですが、凶悪な魔物討伐の依頼を受けたパーティーは壊滅。結局、その魔物は他のSランクパーティーが難なく倒したそうです。どんなに人数がいても、実力が伴なわなければ本当に強い相手には敵いません。それからはギルドも個々の力を重視するようになったと聞きます。Sランクのパーティーには総合的な戦力は勿論ですが、個々の高い戦闘能力が求められるんですよ」

「……それなのに私のパーティーはSランクとして評価されているのか?Gランクの冒険者が二人とサラマンダーしかいないというのに――少し評価がおかしいのではないか?」


 ミハイルは呆れたように苦笑する。獣人を壊滅させた実力を考えるなら、サラマンダーの戦力だけでも、Sランクの冒険者、十数人分に匹敵するだろう。

 特にミハイルは実際に炎を身に纏うサラマンダーを目にしている。そして炎を吐き出した姿も……

 だからこそ断言できる。Sランクの冒険者が束になっても、あのサラマンダーは絶対に勝てる相手ではないと。あれは人の手に負える代物ではない。

 そんなサラマンダーを従えているのだ。評価がおかしいどころか、Sランクは至極当たり前である。寧ろSランクでも評価が低すぎるくらいだ。

 そういう意味では、レオンの語っていた評価がおかしいという発言は強ち間違いではないのかもしれない。

 ミハイルは思う。

 あれはサラマンダーではない、神話や伝説に出てくる神獣に違いないと――

 そして、それを従えるレオンは、やはり神なのではないか?と――



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