Sランク冒険者⑲
「ギルドで試験を受けてCランクに上がったの。試験官にはGランクからCランクまで上がれる人は極稀だって言われたわ。やっぱり私は天才なのよ」
自慢げに話すウィズであったが、レオンはさっぱり意味が分からない。ギルドの試験というのも初耳である。
「ミハイル、ウィズが言っている試験とは何だ?冒険者になった時に試験があるとは聞いていないぞ?」
「冒険者になっても直ぐに試験は受けられません。だから初めは敢えて説明はしないんですよ。ある程度依頼をこなしてギルドから実績が認められると、初めて試験が受けられるようになるんです。レオンさんは依頼を殆ど受けていませんし、実績もサラマンダーによるものです。個人の戦闘技術を確かめる試験は、時期尚早と判断されているのかもしれません」
(まぁ、そうだろうな。依頼は殆ど受けていないし、手柄は全てサラマンダーに押し付けている。ドラゴン討伐の時も眺めているだけで何かしたわけではない。サラマンダーも偶々手懐けられたと思われている。恐らくギルド内での俺の実力は未知数、若しくは無いに等しいだろう。そんな素人に試験を受けさせるはずもないか……)
レオンは納得したように首を縦に振る。
「なるほど……。それで?その試験を受けるとSランクにもなれるのか?」
「それはありません。確かに試験を受けると実力に見合ったランクを与えられますが、それは最高でもBランクまでになります。それ以上は依頼をこなして実績を積み重ねるしかありません。それと試験には高額な金銭を要求されます。これは安易に試験を受けられないようにするためらしいです。冒険者ギルドの戦闘教官にも、人数に限りがありますから」
「ふむ。まぁ、当然と言えば当然か。戦闘教官とて頻繁に試験の相手をさせられては怪我もするだろうしな」
「レオンさんも試験を受けられては如何ですが?パーティーランクがSランクに上がるのですから、多分ですが試験を受けられると思いますよ?」
「そうなのか?」
「高いランクのパーティーは様々な恩恵が受けられますからね。Sランクのパーティーなら多少の融通が利くと思いますよ?例えば僕らの
嬉しそうに語るミハイルに、クライツェルが賞賛の声を上げた。
「なんだミハイル。お前んとこはAランクになったのか?Aランク以上のパーティーは近隣諸国でも数える程しかいないってのに。こりゃ王国の未来は明るいな」
「実はシェリーもAランクに上がったんです。これで僕らのパーティーもAランクが三人ですからね。パーティーランクが上がったのはウィズとシェリーのお陰です」
予期していなかったのだろう。突如として名前を上げられたシェリーは恥ずかしそうに俯いている。顔を真っ赤にして身を
それを見て面白いと思ったのだろう。クライツェルが冗談交じりで話し掛ける。
「シェリーも遂にAランクか。その歳でAランクに成れる奴はそうはいないからな。シェリーは料理も上手いんだろ?色んな意味でも将来有望だな。もしミハイルと折り合いが悪くなったら俺のところに来なよ。そん時は一生面倒見てやるからさ」
更に真っ赤になるシェリーを見て、クライツェルは面白そうに笑っている。
それを見たミハイルは、「この人はもう……」と、困ったように深い溜息を漏らしていた。
「僕の前で堂々とシェリーを勧誘しないでくださいよ。冗談でも怒りますよ?」
「いや、悪い悪い。シェリーの仕草が可愛くてな」
「はぁ、まったくもう……。それで?クライツェルさんのパーティー、
「うん?俺のところは変わらずだな。俺とヴェゼルがSランク、ルークとケリーがAランクで昔のままだ」
「そうですか……。やっぱりAランクからSランクに上がるのは難しいんですね」
「単純に依頼をこなすだけではSランクには上がれないからな。AランクとSランクの間には壁がある。お前のように若くしてAランクに上がっても、そこからSランクに上がれない冒険者は今までにも数多くいた。ミハイル、お前はそうなるなよ」
「ええ、必ずSランクに這い上がってみせますよ」
ミハイルが真剣な面持ちで答えると、クライツェルはニッと白い歯をみせた。
「その意気だ。尤も、お前より先にうちのルークとケリーがSランクになるがな。いや、それより先に俺がSSランクになるかもな」
「僕も負けませんよ」
笑みを浮かべるクライツェルとミハイル、その光景を横目にレオンは二人の会話を思い返していた。
(AランクからSランクには簡単になれないのか。もし、それがパーティーランクにも当てはまるとしたら……。俺のパーティーは戦力外のGランクが二人にサラマンダーが一匹……。それでSランクだと?もしかして、うちのゆたんぽ、すんごい評価されてない?)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます