Sランク冒険者⑰
レオンは小さく溜息を漏らすと、クライツェルの仲間たちを見渡した。
「私には勿体無いくらい良く出来た妻だからな。それよりも、お前の仲間も紹介してくれないか?今日は防寒着を着込んでいるようだし、暖炉の側に行かなくても寒さは大丈夫なのだろ?」
「ああ、問題ない。俺の隣から順に紹介しよう。先ずは戦士のルーク。俺たちの盾役で体力も力も人一倍ある。次が魔術師のヴェゼル。攻撃魔法の他にも回復魔法も使えるパーティーの要だ。最後が
クライツェルに名前を告げられ仲間たちが会釈をする。
ヴェゼルと呼ばれた魔術師は中年の男性だが、その他の仲間は二十代後半だろうか?クライツェルと然程変わらない歳に見える。
簡単な紹介が終わると、最後に紹介されたケリーが、「そう言えば」と、口を開いた。
「腕輪を見る限りお前たち夫婦はGランクのようだが、パーティーランクはどうなっているんだ?サラマンダーを騎乗魔獣にしているなら、パーティーランクがGランクということはないだろ?」
「何を言っている?私も妻もGランクなのだから、パーティーランクもGランクに決まっているだろ?」
レオンは至極当たり前のことを言ったつもりであるが、クライツェルやミハイルの言葉は違っていた。
「そんなことはないはずだ。騎乗魔獣も戦力として考えられるからな。何よりお前のサラマンダーは獣人を殲滅させた実績もある。それでパーティーランクがGランクは有り得ないだろ?」
「レオンさん何を言ってるんですか?レオンさんのパーティーランクはSランクですよ?ギルド本部とのやり取りもありますから、まだ正式には発表されていませんが――フィーアさんから話を聞いていないんですか?」
ミハイルの言葉を理解できないのか、レオンは暫しの間言葉が出ない。
少し間を空けてから――
「はぁ?」
レオンの口からは、なんとも間抜けな声が漏れた。
明らかに何も知らない様子のレオンにミハイルは首を傾げる。
何しろその話は、少し前に偶然ギルドで遭遇したフィーアから聞いたものだ。フィーアが知らないはずがないのだ。
伝え忘れたのかな?と、ミハイルが横目でフィーアを見ると、フィーアはレオンに対して深々と頭を下げていた。
「申し訳ございませんレオン様。実は十日程前、ギルドマスターのバーナスに呼び出されまして――」
「パーティーランクはSランクだと言われたのか?」
「はい……。私は反論したのですが、どうしても駄目だと……」
(そうか……。フィーアは反論したんだな。大体どうかしてるだろ?パーティーメンバー全員Gランクなのに、どうしてパーティーランクがSランクになるんだよ。冒険者ギルドのトップは頭がおかしいんじゃないのか?)
「謝らずともよい。お前が反論しても駄目なら仕方あるまい」
「力及ばず申し訳ございません。私は何度もSSS以外のランクは有り得ないと申し上げたのですが――」
「………………」
「SSとSSSは、多大な功績を上げた個人に贈られる勲章だと断られまして――」
「………………」
(……何でフィーアは時々どうしようもなく駄目な子になるんだろうか。それに、まさかパーティーランクがSランクになるとはな……。唯でさえサラマンダーのことで目立っているというのに……)
想定外の発言にレオンは言葉もない。
だが、それだけではないのかフィーアの話は尚も続いていた。
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