Sランク冒険者⑪
レオンがグラスランドへ飛んだ時には既に陽は落ちていた。
天守閣に置かれた
上段の間では、胡座をかいたレオンが脇息に片肘をつきながら事の次第を説明し、下段の間では、正座をした撫子が静かに耳を傾ける。
「――と、言うわけなのだが。ベルカナンの住民に負担をかけないためにも、どうにかならないか?」
「暖かい風を起こすことは可能と存じます。風花をお呼びしますので、レオン様から直接お声を掛けていただけたら幸いです」
「別に構わんが……、呼ばずとも通話でよいのではないか?」
「風花も直接レオン様からお言葉を賜りたいはず、それにレオン様とお目通りが叶うと知れば、風花の士気も上がることでしょう。レオン様への忠誠と敬愛の念も深まると存じます」
(そんなんで士気が上がるのか?それに忠誠と敬愛が深まるだと?いや、撫子の話を鵜呑みにするのも良くないか。撫子は気配りが上手いからな、俺に気を使っている可能性が非常に高い。全てが嘘とは言わないが、話半分に聞いた方がいいのかもしれないな)
「うむ、では風花を呼べ。私が直に命を下そう」
「レオン様、私の我が儘をお聞きくださりありがとうございます。早速、風花をお呼びいたします」
撫子は深々とお辞儀をすると瞳を閉じて通話を始めた。だが暫くすると、困ったように顔を顰めて溜息を漏らす。
「申し訳ございませんレオン様。風花と連絡を取りましたところ、それを聞いた雷花もレオン様にお目通り願いたいと……」
「そう言えば、二人は一緒に行動していたな」
「はい。風花は風を起こすため、雷花は雲を作るため、二人は国境の上空にて一緒に待機させております」
「二人とも国境の警備に付いているのだ。風花だけ呼ぶのは気が引けるな。遠慮はいらん、雷花にも来るように伝えろ」
「畏まりました」
撫子が通話で何かを伝えた途端、大広間を一陣の風が吹き抜ける。
風は蝋燭の炎を揺らすと瞬く間に消えてゆき、代わりに二人の少女が姿を現す。十五、六の少女たちは、レオンの姿を見るや我先にと飛びついた。
「レオン様!お会いできて嬉しいです!ずっと会えなくて寂しかったんですから!」
「それはすまなかったな雷花」
レオンの右胸に飛び込んで来たのは雷神の雷花である。
短めの金髪が印象的な雷花は、肌寒い夜でも水着のような虎柄のパンツと胸当てを身に着け、露出した肌を擦り付けるようにレオンに甘えていた。
レオンが頭を撫でると、「えへ~」と、だらしなく表情を崩している。
それを見たもう一人の少女、風神の風花も負けじとレオンに迫ってくる。レオンの左胸にしがみつき、恥ずかしそうにお願いをする。
「レオン様、風花も、風花も頭を撫でて欲しいです」
「よいとも。これでどうだ?」
レオンは風花の頭に指を這わせた。
髪を
風花の口から思わず、「気持ちいいですぅ」と、言葉が漏れる。レオンに抱きついた雷花と風花は離れる気配が全くない。
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