侵攻㊳
レオンは揺れ動く二本の尻尾を見ながら思考を巡らせる。
(触りたい……。じゃないだろ!俺は変態の烙印を押されたいのか!そうじゃない、今後のことを考えなくては……。念のため東の国境にはノワールを潜ませている。ノワールは対象を発見次第そのまま尾行、運が良ければ相手の拠点を掴めるかも知れない。尤も、もし相手が俺なら警戒して獣人の国には近づかないな。それに、もし近づくにしても他の場所から侵入するだろう。だが、他の場所に回せるほど隠密に余裕はない。少なくても霞とフレッドは街に置いておきたい。一番手痛いのは相手の潜入に気付かず街に潜伏されること。それだけは絶対に阻止する必要がある。後は単純に戦力の増強だな)
「撫子、明日は草食系の獣人を
「はい。レオン様の言い付け通り、全ての獣人と友好的に接しております」
「うむ。では明日、ガルムとヴァン、それと新たな熊族の王も呼び集めろ。プレイヤーがガルムたちを標的にする恐れもある。本当ならゴーレムを量産して守ってやりたいのが、ゴーレムが街中に配置されていたら、獣人たちもよい顔はしないだろう。だからガルムたちには力を与える」
「それはよろしゅうございます。獣人の王もレオン様の偉大さに感銘を受けることでしょう」
「では頼むぞ。私は一度屋敷に帰る――が、その前に……」
レオンの視線は鈴音の猫耳と尻尾を捉えていた。
ピクピク動く猫耳と揺れる尻尾が可愛らしい。レオンは鈴音を手招きすると自分の傍に座らせた。
「レオン様どうしたの?」
「鈴音、自分の命を削って頑張るのはよいが、あまり心配をさせるなよ」
レオンは労いの言葉を掛けながら、ここぞとばかりに鈴音の頭を撫で回す。
これなら自然と猫耳に触れてもおかしくない。レオンは自分でも良い考えだと内心ガッツポーズをしていた。
(俺、天才じゃない?これなら誰にも怪しまれることはないだろ。それにしても猫耳が柔らかいなぁ……。わぁあ、何この生き物?可愛すぎるんですけど……)
鈴音は目を細めて「はぅ」と声を漏らしていた。
気持ちがいいのか、遂には完全に目を閉じてレオンの為すがままである。レオンは
呼応するようにヒュンフも立ち上がり、レオンに歩み寄る。
「では帰るか」
レオンの言葉にヒュンフが二つ返事で返すと、二人の姿は消えていった。
鈴音は目を見開き撫子の下に駆け寄る。そのままタックルのように勢いよく抱きついた。普通の人間であれば、それだけでも即死であろう。だが撫子の体は微塵も揺らぐことはない、しっかりと鈴音の体を受け止めていた。
普段は無表情の鈴音であるが、見上げたその顔には満面の笑みを浮かべている。
「レオン様に頭撫でられた!大吉!」
「良かったわね。きっと鈴音が頑張ったからよ」
「また撫でられたい!」
「そうね、また頑張らないとね」
「うん、頑張る!」
そんな二人の微笑ましい様子を眺めながら、翁は「よいしょ」と、
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